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Stories of fate


花籠 3

花籠 3 (動き出した輪) 4

「待ち合わせの正確なポイントは?」

 薄暗い部屋の静かな空間で、目の前のパソコン画面を睨みつつ、男は背後に立つ若い男性に聞いた。二人とも窓を背にしているので表情はよく分からない。もっとも、この空間は光が薄すぎた。

 座っている男もそれほど年はいっていないようだ。さらりと揺れる前髪を億劫そうにかき上げて厳しい表情を崩さない。背後の男性はほとんと白銀に近い、ごく淡い金髪であることが辛うじて分かる。明らかに日本人ではない彫りの深い顔立ちなのに、流暢に日本語を操る。

「…確か、渋谷のハチ公前です。」
「ハチ公? なんだってそんな目立つところで…」
「ええ、本当かどうか知りませんが、観光も兼ねているという話ですから。」
「…ふざけているのか?」
「いえ、至って真面目だと思います。」

 男は不意に立ち上がって、どこかイラついたように窓辺に歩み寄った。

「総帥、そちらは…っ」

 背後に立っていた若い方がはっとしたように顔を上げた。

「あいつを呼べ。」

 総帥と呼ばれた男は閉じたままのカーテンの隙間から少しだけ顔を覗かせた。背後の男が慌てて彼に歩み寄る。

「総帥。」
「あいつを呼べ、庸(よう)。」

 不意に名前を呼ばれた若い男は、ため息混じりに苦笑する。

「私だから咄嗟にご理解いたしますが、ご命令は正確にいただかないと誤解の元になりますよ。」
「お前が分かっているなら良いだろう。」
「イラつかれるのは勝手ですが、正常な判断が鈍って損をされるのは総帥です。」

 庸はそう言いながら、一礼してその部屋を出ていく。それを見送って、総帥はたった今言われた嫌味などより、そもそもの苛立ちの原因を思い、息を詰めたままで閉まる扉を凝視していた。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


おっとぉ~?これは?劉瀞?
そして・・・「庸」ですか。(*^_^*)
なるほど・・・傭兵の「庸」・・・これはまた意味深な若者ですねぇ・・・。

前話では、久しぶりにローズが動き出す気配がありましたし。。。
これは先が気になる気になる(@_@;)
#1108[2011/12/27 00:50]  秋沙   URL  [Edit]

秋沙さまへ

秋沙さん、

> おっとぉ~?これは?劉瀞?

↑↑↑さすが、秋沙さん!!! はい、その通りです。すぐに名前も出て来て、組織の説明描写が入ってウザくなります(--;

> そして・・・「庸」ですか。(*^_^*)
> なるほど・・・傭兵の「庸」・・・これはまた意味深な若者ですねぇ・・・。

↑↑↑なるほど。傭兵かぁ。それもありますなぁ。
でも、fateとしては、実は『中庸』の庸だったのだが…(と言ってもあんまり意味はない。ただ、名前を考えるときに、音で思わず「よう」と出て来て、「陽」以外だと何が? と考えたに過ぎない。まぁ、つまり『白昼夢』シリーズの影響です(^^; 生みの親はlimeさんと秋沙さんなんだよ~ん!)


んで、実は…ああ、またっ
もう、すぐに何でも言いたくなる。
すみません、静かにします(-"-*


#1115[2011/12/27 08:46]  fate  URL 














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