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Stories of fate


花籠 2

花籠 2 (残照と幻夢) 12

「ジャスミンのお父さん…師匠って、今、どうしているんですか?」

 牡丹はイライラしているアカシアの様子をちょっと不安そうに眺めながら、アイリスの向かいのソファに座り、彼女の白い指先をじっと見つめる。アイリスは、何か小さな紙切れを器用に丸めては瓶に詰め込んでいる。仕事の準備だということは分かっているので、牡丹は特にそれについて質問はしない。それぞれ、手技が違うこともあり、お互いにあまり詮索をしないようにしているのだろう。

 知らなければ、敵に捕まってもお互いを不利にするような情報を相手に与える危険は減る。

「アジアのどこかにいる…という噂よ。タイだったか、マレーシアだったか…」
「噂?」
「所在を知っているのは花篭だけよ。日本で有名になり過ぎて、ちょっとヤバくなっちゃったみたい。警察にも目を付けられているらしいしね。」
「…有名人なんですね。」

 牡丹は目を見開いてため息をつく。

「まぁ、この業界では、ってことね。彼は花籠のメンバーではあるけど、他からも仕事を請け負っているから、日本じゃ舞台が狭すぎるんでしょ。」
「他って、…まだあるんですか? こういう組織。」
「そうねぇ。あたしが知っているのはあと二つ。けっこうろくでもない、本気で何でも屋のヤクザ絡みの組織と、海外に拠点を持っている人材育成を主に行っているかなり大規模な‘スムリティ’ってやつ。他にもまだまだ裏業界には名を連ねているしょーもない集まりは沢山あるけど、ジャスの師匠が請け負うのは花籠以外ではその二つくらいね。」
「すごいですね。」

 にこりと牡丹は微笑む。

「牡丹ちゃん? 貴方は『花籠』だけにしておきなさい。そして、出来ればいずれ除籍してもらった方が良いわよ。」

 アカシアがぴくりと反応を示した気配を感じて、アイリスは、ふふ、と笑う。

「アカシアは、後悔しているのよ、貴方をこの世界に引き込んでしまったこと。」
「それは、…僕が決めることでしょ?」

 牡丹は無邪気に微笑む。しかし、その瞳が彼の奥底に潜む暗い闇を呼び起こす様をアイリスは知っている。牡丹が、仕事をこなすことで、もしかして精神の均衡を保っているかも知れないことも。

「貴方の中に潜む蛇を操れるようにしておきなさいね。不要なときに表に出さないように。」
「はい、心掛けてます。」

 姉に諭されているような気分になって、牡丹はにこにこと嬉しそうな顔をした。それは、話の内容を聞かなければ、無邪気な姉弟の会話にも見えるような、懐こい笑顔だった。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


おお、こんな所にスムリティが。

そこに「OEA」も入っていそうですな(^^)

やはりOEAもそうですが、そこで働く「殺し屋」にもそれぞれ葛藤があるんですね・・・。
このお話、李緒ちゃんの人生も気になるしジャスミンの不可思議な存在感も興味をそそられますが、この牡丹、いいですねぇ。
#999[2011/12/19 22:15]  秋沙   URL  [Edit]

秋沙さまへ

秋沙さん、

> おお、こんな所にスムリティが。
> そこに「OEA」も入っていそうですな(^^)

↑↑↑スルドイっ
実を言うと、思わず言及しそうになりました『OEA』のことも。
しかし、事前にご了解も得ていなかったし、まぁ、さすがにそこまで勝手は出来んだろう…と見送りましたが。
でも、本当は言いたかった~

小説サイトでは、ジャスミンをけっこう気に行ってくださる方がいらっしゃいましたが、fateも何気に牡丹が気になるところです。
もしかして、最終的に一番ヤバイのはこの子かも~
#1002[2011/12/20 08:26]  fate  URL 

はい!はい! 私も牡丹が気になります!

って、またこのパターンで飛び込んできました。

スムリティ、出てきましたね♪
そういえば、スムリティ本編では、育成事業というだけで、この裏稼業の事には、あまり触れてなかったような気がしました。(え?触れてました??)
予感は、ムンムン感じましたが。
やっぱり、そういう組織の一部分も、担ってたんですよね?
そうなると、またいろいろ物語が複雑に膨らんで・・・すごい巨編が書けそうじゃないですか!

ああ、OEAも混ぜて~(爆
でも、きっとOEAは、こんな裏稼業組織からしても、鼻つまみもんでしょうね。^^
(お前ら、なんか暗い!とか)

まるで初々しい新婚さんのようなジャスたちも気になりますが、やはり牡丹の本当の初陣、気になりますねぇ。

それって、牡丹自身にどんな影響を与えてしまうのか、ちょっと怖いです。
いつか、書いてくださいね^^(だんだん要求するようになってっきたぞ)
#1209[2012/01/03 23:34]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

> そういえば、スムリティ本編では、育成事業というだけで、この裏稼業の事には、あまり触れてなかったような気がしました。(え?触れてました??)

↑↑↑実はっ!!! 詳しいことは何にも考えてなかったし、未だに設定がしっかりしておりません(--;
なんで、こんな世界が入り乱れたかというと、小説サイトでお一人の読者さまから、『スムリティ』世界をもう少し深めてシリーズ化して欲しいとのリクエストをいただいたんです。
ほんじゃ、組織モノである『花籠』と絡めて一気に説明しちゃえ! とか思って、もともとシリーズモノにするつもりだったこちらに人物を絡めてみました。
なんか言われるとすぐその気になって、あああ…こんな予定では…ということが起こっているのダ。
おだてられ過ぎであろう(-"-*
かなりすぐその気になるおバカですので、力量以上のことをお望みになることは、皆さん、やめましょー

> ああ、OEAも混ぜて~(爆
> でも、きっとOEAは、こんな裏稼業組織からしても、鼻つまみもんでしょうね。^^
> (お前ら、なんか暗い!とか)

↑↑↑(爆笑っ!!!)
いや、言及させていただいてよろしかったのなら、ここで一発ぶちかましてたな~
そのうち、おええええっ?? という感じで語られていたら、笑って許してくださいませ~(^^;

牡丹は…
そうですなぁ。
そういえば、どうなんすかね。あまりそこまで深く考えませんでしたが、なるほど! と今思いました。
‘4’にちょっと使わせていただきます。
へへへへへ。
ありがとうございました~(^^)
#1217[2012/01/04 08:15]  fate  URL 

スムリティって、へえ~、なるほど、そういうことですか。確かに巨編の気配。

にしてもこの業界もいろいろあるもんですね。

そしてこの『花籠』
本当にいろいろな能力を持った人がいるんですね。
性格もいろいろ。
もっと暗い性格の人ばかりかと思ってましたが、そうでもないみたい。笑。
私も未だに特技が見つけられていませんが、
まだ入ることを諦めたわけではありませんからね。
ええ。
#1219[2012/01/04 11:31]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、

> スムリティって、へえ~、なるほど、そういうことですか。確かに巨編の気配。
> にしてもこの業界もいろいろあるもんですね。

↑↑↑なんか、そんな風におっしゃっていただけると、ほんとにそういう業界がありそうな気がしてきます(・・;

> 私も未だに特技が見つけられていませんが、
> まだ入ることを諦めたわけではありませんからね。
> ええ。

↑↑↑はい、いつでもお待ちしております(^^)
この辺までは実はあんまり何にも考えていなかったので、するする進んでおりましたが、現在、あり得ないくらいハナシが大きくなって収拾つかない状況です…(--;

#1222[2012/01/05 07:21]  fate  URL 

ジャスミンはいいんだけど・・・

プロの殺し屋のくせに能天気に見えるジャスミンはホッとさせてくれるところがあって好きです。
だけど・・・・
私、へびだけはどーーーーーしてもダメなんです>w<
TVに映るだけでもダメだし、その写真の載った雑誌には触れません。それを見かけた場所は10年たっても20年経っても覚えていて、どうしても通れません。2年ほどまえ、車に乗っていて見かけてからというもの、もうその車から降りられなくなりました>w<
牡丹とは逆に、ここまで生理的に受け入れないってのも、前世でなんかあったんじゃないかと疑っているくらいです>w<

どうぞこの先、あまりでてきませんように(;w;うるうる
#1298[2012/01/13 11:21]  あび  URL 

Re: ジャスミンはいいんだけど・・・

あびさん、

> プロの殺し屋のくせに能天気に見えるジャスミンはホッとさせてくれるところがあって好きです。

↑↑↑おお、これは、狙った通りのご感想いただけて嬉しいです(^^)

> 私、へびだけはどーーーーーしてもダメなんです>w<

↑↑↑ああ、やはり。
っていうか、一般の方って大抵そうですよね(・・;
だけど、そんなにダメなのって、確かに前世とか何か原因があるんでしょうな。
あああ、どうしよう!
これって、あれです。まだ出てくるんです、蛇。
ごめんなさい、こちらは退出された方良いかもです~(^^;

#1305[2012/01/14 09:22]  fate  URL 














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