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Stories of fate


花籠 2

花籠 2 (残照と幻夢) 8

 3日後の比較的大きな仕事に、4人は計画を練った。

 ある会社の一家を3人まとめて一気に片付ける依頼だ。表向きは健康食品の製造販売。裏では詐欺や合成麻薬の元締めのような悪徳会社だ。彼らのために自殺、一家心中などに追い込まれた人間の数は五十をくだらない。未遂や夜逃げ、入院、闇から闇へ葬られた人々の数は、もう数え切れない。

 花篭へ、どこから依頼が舞い込んだのかは定かではない。しかし、頼まれなくても始末したいような一家だ。

「やつらは、命を狙われる危険性を充分に把握している。こっちも相当、周到にいかないと難しい。一朝一夕では無理だな。」

 アカシアの言葉に、牡丹は神妙に頷く。彼にとってはほぼ初めての大きな仕事だ。

「花籠の情報もやつらは仕入れているだろうと思う。俺たちの正確な人数や構成はどうか分からないが、殺し要因の中にリストアップはされていると思う。」
「ぞくぞくするね。」

 アイリスがにっこりと妖艶な光を瞳に宿す。

「そんなに有名になったのかしら?」
「喜ぶところじゃないぞ、アイ。」
「僕のことも知ってるのかな?」

 期待と不安が半々で牡丹は首を傾げる。

「4人組、というメンバーは俺らだけだ。お前の情報も掴んでいるよ。だから、くれぐれも目立つな。普段は大人しく学生していろよ。それから、ジャス!」

 聞いているのかいないのか、窓際の壁に背を預けてカーテン越しに外を見ていたジャスミンに、アカシアは鋭い一瞥をくれる。

「今度の仕事に支障をきたす。あの子はさっさと始末しろ。」
「…それなんだけどさ。」

 ジャスミンは、外を見つめたまま考え込む。

「あの子って、どの事件の関係者なのかな~、と思ってさぁ。」
「…何の話だ?」
「俺らのこと、知ってるんじゃないかと思ってさ。…いや、俺のこと、かな。」
「分かるように言え。」

 ジャスミンはゆっくりとアカシアに視線を移し、言った。

「正確には、俺の師匠を知っている…んじゃないかと思ったんだ。俺らって姿形も声色もけっこう似ているし…手技も同じだからね。」
「お前の師匠って…親父さんか?」
「えっ? 異母兄弟とか生き別れの妹とか?」

 アイリスが、どこかわくわくした表情を二人に向ける。
 ふっと表情を緩めてジャスミンは笑う。

「そうだったら、おもしろいけどね。そういうことじゃないよ。‘目撃者’ってことさ。」
「…それこそ、まさか…だ。」

 アカシアは、呻った。

「師匠が殺さなかった‘目撃者’を、俺が殺るわけにはいかないなぁ。しかも師匠はなんかあの子と約束したらしいんだよねぇ。…今度の仕事には支障出ない程度にするから、ちょっと李緒ちゃんのこと、調べてみて良いかな。」
「だったら、僕が調べてあげますよ。」

 かつてのハッカー少年が、微笑んだ。

 彼は、一度、自分の能力に怖れを抱き、内にこもった時期があった。そのとき、プログラミングを少し学んでいたこともあって、パソコンを操り、ネットの世界を放浪して、あちこちの裏サイトに入り込む術を見につけてしまっていた。

 しかし、そこにのめり込む程彼は絶望していた訳ではなく、いつの間にか元気を取り戻して現実に戻って来た。ただ、頭の良い彼は、その後もいろいろ情報を引き出す面白さだけは忘れられず、幾度となくハッキングをお遊び程度に楽しんでいた。

 そして、それを使えばどんなことが出来るかも理解していた。ただ、当時の彼は、他に興味のあることが沢山あったのでやらなかっただけだ。

「新聞記事とか調べればけっこうすぐにヒットするとは思いますけど、警察の裏情報とかも含めて。」
「頼むよ。」

 ジャスミンは牡丹に頷いてみせる。
 アカシアは渋い表情のままだったが、Noとは言わなかった。
 
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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


2ですね

こんにちは^^
おっ、2かぁと思って読ませていただきました。確か前作は、fateさんと知り合って最初の頃に読んだんです。
前作にリンクしつつも、独立でも楽しめそうな展開ですね!(番宣のよう。笑)

花の名前にはあまり詳しくないので登場人物を認知するのには一苦労しましたが、面白いです!
組織の中身も全然ぬるくないですが、筆致がライトなのでするするいけますね。
最近ストレスで心がすさみ気味なので、楽しいものにありつけてちょっとホッとしています(><)
続きも楽しみにしてますね~!
#940[2011/12/15 15:39]  たつひこ  URL 

やっぱりそうか。

なんとも・・・自分の親を殺した犯人との約束を待ち続けていたなんて・・・李緒・・・・(ToT)
親ってなんだろう。
でも、子供はやっぱり愛を求めてるんだよね。
本能で。

李緒のセリフや心の動きが、いちいちせつないです。
#943[2011/12/15 20:52]  秋沙   URL  [Edit]

Re: 2ですね

たつひこさん、

> おっ、2かぁと思って読ませていただきました。確か前作は、fateさんと知り合って最初の頃に読んだんです。
> 前作にリンクしつつも、独立でも楽しめそうな展開ですね!(番宣のよう。笑)

↑↑↑はい、2です(^^)
実を申し上げますと、前作が行き詰ってメンドくなったので切り上げて、風穴を空けるために新たな人物を構成しました。
はい~、人物が多過ぎたと反省しております。
花が入り乱れて、訳分からんですよね(--;

> 最近ストレスで心がすさみ気味なので、楽しいものにありつけてちょっとホッとしています(><)
> 続きも楽しみにしてますね~!

↑↑↑うおおおぅっ!! どうしたんですかっ、たつひこさんっ!!
ま…まさか、蠅との戦いに敗れて…(ToT)

いやいやいや。年末年始気忙しい上に、ストレスためちゃいけませんぜぃ!
それこそ、鍼灸でも温泉でも通われて(全然ちげ~だろ(--;)回復をはかってください。
頼まれれば日本国内ならどこまでも出張治療に出かけるバカな鍼灸師をご紹介いたしましょうか?(^^;
いや、マジで。

こんなところでタネ明かしもなんですが、これはこのまま‘3’に突入します。
そして、秋沙さんにも申し上げましたが、‘3’は『スムリティ』の人物が入り乱れます。たつひこさんも先に『スムリティ』を読んでいただいていたので良かった~(^^)


#948[2011/12/16 08:29]  fate  URL 

秋沙さまへ

秋沙さん、

> やっぱりそうか。

↑↑↑はい、ご想像通りでした~!!

> なんとも・・・自分の親を殺した犯人との約束を待ち続けていたなんて・・・李緒・・・・(ToT)
> 親ってなんだろう。
> でも、子供はやっぱり愛を求めてるんだよね。
> 本能で。

↑↑↑現実的にあり得ない? いや、あるかな? ラインのギリギリを狙ってみました(^^;
‘親’と‘愛’を天秤にかけるようなことをしてしまったけど、fateはしばらく‘絶対’だと思っていたことがあったんです。それが、ちょっと揺らいだ事件があり(いや、単にそういう本を読んで衝撃を受けただけ~)、じゃ、子どもが虐待する‘親’を見限ることもあり? と模索して生まれました、李緒ちゃん。
そして、命名の貧困さがここにきて「ぎゃあああっ」と発覚!!!!
いや、ここは良いよ。
‘3’で、ものすごいややこしいことになってしまっておりますっ
だって、ローズと一緒にいるのが「奈緒ちゃん」で、こっちは「李緒ちゃん」。一字違い? しかも、似たような境遇の子!
ああ…とずっしり力尽きたfateが一匹…

> 李緒のセリフや心の動きが、いちいちせつないです。

↑↑↑今回、珍しく女の子の心理に迫ってみましたっ
リアリティが出るかどうか不安ですが…

#951[2011/12/16 08:57]  fate  URL 














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