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Stories of fate


スムリティ(R-18)

スムリティ (休養) 24

「お前にとって日常の普通のことが、『外』ではけっこう特殊なことなんだよ、美咲。…でも、まあ、お前の場合、身体が勝手に動いたんだろうな。」

 その通り、と私はこくこく頷く。
 なんか、…悪いこと、しました?

 猛スピードで走っている車を実際に見たのは初めてだったが、似たような状況の訓練は私はもともと好きだった。あれは四方八方から飛んでくる障害物を避けて目的地までを走り抜ける…というやつ。スポーツ大会の種目で、私は得意だったのだ。あれに比べたら車は二方向からしかやって来ないから、断然楽だったし、子どもを守るという行為は日常の延長だ。

「それで、お前に確信を抱いたんだろうな。恐らく、ホテルは見張られていたんだろう。俺が入って行ったことは見ていたんだろうから。それでも、連れが誰だったのかは掴んでいなかった。それで、ホテルから出て来た女性をすべて見張っていたんだろう。」

 劉瀞は、私の頬を撫で、そして握っていた私の右手に唇を寄せた。

「退院したら…」
「ま…待って!」

 施設へ帰されるのだと思って私は彼の手をぎゅっと握り返す。

「待って。もう、一人で勝手に出歩かないから…っ」

 劉瀞は、くすりと笑う。

「お前が勝手に出歩いたわけじゃないだろ?俺が良いと言ったんだ。」
「で…っ、でも…その…」
「なんだ、はっきり言ってみな。」

 私の言いたいことなんて分かっているくせに、やつはそんなことをにやにやと聞く。

「…もう少し、こっちに置いて…ください。」
「良いよ。」
「えっ?良いんですか?」

 あまりあっさり言われて私はむしろ面食らった。

「別にお前を帰そうと思ってるわけじゃない。お前にはこっちでもう少し勉強してもらわなきゃならないからな。」
「はあ…」
「今後は護衛をつける。そして、やはり、今までのように自由にはさせられないな。弥生や庄司と会うことも禁止だ。」
「ええっ???」

 私の抗議の声に、劉瀞はたたみ掛ける。

「お前が二人に会ったりしたら、あの二人も関係者だと知れる。弥生が狙われても良いのか?」
「…っ!!!ダメっ!」

 だろ?と劉瀞は笑う。私は、一息ついて、更に大きなため息が出た。
 そうか、仕方がないか…。だから、劉瀞はさっきも弥生を車で送らせたんだ。

 ここは、救急指定の総合病院というよりは、どうも特殊な患者だけが収容されている専門病院のような雰囲気らしい。売店を探して院内を歩き回った弥生がこっそりと教えてくれた。患者のほとんどは、いわくありそうな怪我人が多いと。

 と、いうことはつまり、『関係者』の経営なんだろう。
 ここに出入りすること自体、実は弥生にとってはマズイのだ。

「庄司は・・・大丈夫だったんですか?」

 結局、私は彼の顔を見ていない。彼の声を聞いただけで、次に意識が戻ったのは病院だったのだ。
 そして、思った。
 劉瀞は、結局、庄司を信頼して頼りにしているだと。

「あいつは元気だよ。怪我のひとつもせずに戻って来た。」

 劉瀞は、私の顔をじっと見つめながら言う。

「よく、庄司だと分かったな。お前、ほとんど意識はなかっただろ?」
「声を聞いたので…。」
「なるほど。」

 劉瀞の表情に僅かに憮然としたものが混じり、私はちょっと身をすくめた。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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