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Stories of fate


スムリティ(R-18)

スムリティ (冒険) 14

 公園散歩を終えて帰る園児たちに手を振って別れたあと、私はアイスクリーム屋を探しに公園内を歩き回った。先生方には、園長からもお礼を・・・とかなんとか言われたが、面倒なので、よろしくお伝えください、とだけ言って笑った。こういう場合、本当はなんて言えば良かったのか分からない。

 それに、あれは条件反射的に勝手に身体が動いただけで、善意があった訳でも、その子を助けたいという明確な思いすらなかった。

 まさに条件反射。

 いつも、施設で子ども達を相手にしているせいで、身体が勝手に反応したのだ。職業病だな、と私は勝手に分析した。

 腕に抱いたしょうたくんの子ども特有の熱さ。しなやかな柔らかさ。命のずっしりした重み。
 愛されて育っている子は、こんな風に泣いたり笑ったり、そして、お礼をきちんと言えるんだ、という感慨。

 なんだか、時間が経つにつれ、私は切なくて涙が出そうになった。ふと気がつくと肘を少しすりむいていたようだ。

 ひりひりと痛む擦り傷を見て、私は生きていることを感じた。
 生きている。その、痛み。

 外に出て勉強しろ、と言った劉瀞の言わんとしていたことが少し分かったような気がした。何もかも管理された施設の中とは違い、生々しく生きて、怪我をして、ちょっとした油断で死にそうになったりする。

 それでも、皆、光を受けてきらきらと生きている。
 愛されていることを知っている。
 弥生も、両親がいるとき、僅かでもそんな時間を過ごしただろうか?




 やっとのことで、屋台を見つけたら、そこはアイスクリームだけではない、いろんな食べ物を売っていた。私はすぐに食べ物に目を奪われ、見たこともない不思議なその食べ物たちをゆっくりと眺め、これ、どうやって食べるんですか?と店の人に聞いてみる。

「なんだ?知らないのかい?」

 店のおじさんは呆れながらも丁寧に教えてくれた。ホットドックや、ポップコーンや、紙コップの飲み物。
 私はじっくり選んでキャラメル味のポップコーンとコーヒーとアイスクリームを買った。そして、それらを近くのベンチに座って食べ始めた。

 ベンチの上には誰かが置いていったらしい新聞紙が丸まってあって、私はそれを見るともなしに眺める。
 施設でもニュースの類はテレビで観ていたし、新聞もいくつかの種類が常に置いてあったので、たまに私は眺めていた。その話題に現実感がなくて、外の世界ではいろんなことがあって忙しいことだ…、と思っていたが、これだけ人がいて、これだけ車がたくさん走っていて、いろんな職業の人がいろんなことをしていれば、確かに何でもありだろうな、と感慨深く思う。

 食べ終わって、入っていた紙袋や紙コップを店に帰そうとしたら、ちょっとイヤそうな顔をされた。そして、そこのベンチの脇のゴミ箱に捨ててくれて良いんだよ、と言われる。

「え…っ?捨てるんですか?全部?」
「そうだよ。」
「一回ごとに全部?」
「そう。」

 なんという無駄!なんという浪費!

「…もったいなくないですか?」

 店のおじさんは呆れてまじまじと私を見た。

「お嬢さん、どっかの田舎から出てきたの?」
「…はあ…、まあ、そんなもんです。」

 彼は困ったように笑った。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


いいですねえ、いいですねえ。
なんだか、美咲の気持ちにリンクして、ドキドキします。
外の世界を何も知らないまま大人になって(あ、ごめんなさい、美咲は何歳でしたっけ)いきなり光の中に飛び出した人間の目に映るもの。
新鮮ですね。

そして、愛されて育った子供たちを見つめる目と、泣きそうになる感覚。
すっと共感できるところもfateさんの力ですね。

一見冷酷そうでありながら、実は美咲をとても純粋に(執拗に?)愛している劉瀞の、見えない鎖に繋がれたまま、美咲はこのあとどうなって行くのか。
少しずつ追って行きます^^
#810[2011/12/06 09:18]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

わん!ありがとうございます!(犬???(--;)
あれですね(どれ?)、刑務所から数十年振りに出てきた受刑者とか、戦争が終わったことを知らずにジャングルに暮らしていた兵士とかが、いきなり現代の日本社会に出てきたみたいな?
まぁ、テレビの映像とかはあっただろうから、それほどじゃないにしても、新鮮なことって驚きと感動の連続ですね~
そういう部分をもっと描きたかったけど、そのカルチャーショック的な感覚がうまく表現出来なかったなぁ(--; とちょっと残念。

> 一見冷酷そうでありながら、実は美咲をとても純粋に(執拗に?)愛している劉瀞の、見えない鎖に繋がれたまま、美咲はこのあとどうなって行くのか。

↑↑↑まったく、fateの描く‘男’はどうしてこんなんばっかりなんだろう???
やはりfateが変態だから仕方がないのかのぅ…

言い訳をさせていただければ、きっと劉瀞は、幼い頃からそういう地位に就くべく厳しく育てられ、マトモに恋愛する暇もなく、いや、愛した女性を仕事絡みで失ったりして(ほんとか?(--;)、戦いに疲れて何か温かいものを求めたときに、たまたま美咲ちゃんを見つけて気に入ってしまったんであろう。
そして、実は、ものすご~く、独占欲が強かったんだ、ということを彼女を手に入れてから知った…みたいな?

何が、「みたいな?」やねん、まったく。

ああ、せっかく素敵なご感想をいただいたのに、この返信はいったい何!!!
すみません、どうか見捨てず、美咲ちゃんをよろしくお願いいたします~!!


#820[2011/12/07 08:28]  fate  URL 

>それでも、皆、光を受けてきらきらと生きている。
>愛されていることを知っている。

これをわからせるために、劉瀞が美咲を外の世界に出したのだとしたら・・・・・・

前々回のコメントを取り消すと言う前回のコメントは取り消します。
(どんだけ流されやすいねん!)
#1313[2012/01/14 13:16]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、

> 前々回のコメントを取り消すと言う前回のコメントは取り消します。
> (どんだけ流されやすいねん!)

↑↑↑いやいやいや。もう一回くらいひっくり返りますって(^^;

#1315[2012/01/14 14:16]  fate  URL 

闇を知っているからこそ光が有難い

人は愛情なくしては正常に育てない。
でも、愛情を受けることに慣れてしまっていると、それが有難いものだと気づけない。
美咲は望まずにではあるけれど、その両方を見られて、そのことに気がつけたんですね。
fateさんの言いたいことがここに集約されているような、そんな気がしましたー^^
#1370[2012/01/20 19:59]  あび  URL 

Re: 闇を知っているからこそ光が有難い

あびさん、

深いことを考えてくださって、ありがとうございます。
うまく言えないですが、でも、言葉にするとそういうことですね~

愛されて育てられないと愛する術を知らない。
だから、人を暴力や恐怖で支配しようとする。
劉瀞にも、まったく歪みがない訳じゃないから、実はそういう傾向が多少あるし、生まれながらに高い地位にいるので、我儘に育った面もあると思います。
だけど、ここではあまり語られませんが、実は彼の背負っているものもかなり大きくて押しつぶされそうに感じて、救いを求めた相手が美咲ちゃんだったのでは? という気がします。

母親に抱かれた記憶として、人肌を求める、ってのが、動物の本能としてもあると思いますし。
とか、思いました(^^)

#1372[2012/01/21 07:34]  fate  URL 

愛されている子供

美咲ちゃんの感じた、愛されている子供はこういうもの……という描写が新鮮で、それでいて胸がきゅっと締め付けられる感じでした。

前にfateさん、書いておられましたよね。

男が力で女を支配しているようでいて、実は女がそうすることによって男を支配している。

あの一文にははっとしました。
今回もこのカップルは、そういうふうなのかな?
#1421[2012/01/26 00:59]  あかね  URL 

Re: 愛されている子供

あかねさん、

ごく普通に見えるご家庭でも、子どもも親も少なからず傷ついたり、疲れ果てていたりするので、一概には言えないですが、でも、親子が幸せである家庭がものすごく理想です。
子どもが笑顔でいられる家。
帰りたいと思える空間。
それをただ必死で求めている人って多いかも知れないな、と。ちょっと別の意味で切なく思いますね。

> 男が力で女を支配しているようでいて、実は女がそうすることによって男を支配している。
> あの一文にははっとしました。
> 今回もこのカップルは、そういうふうなのかな?

↑↑↑ははははは~
スルドイです。っていうか、fateってそういうカップルしか描けないんでは? ってくらい、そういう男女ばっかりです(--;
#1423[2012/01/26 09:19]  fate  URL 














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