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Stories of fate


スムリティ(R-18)

スムリティ (嫉妬) 12

 翌朝、目を覚ますと、劉瀞の姿はなかった。
 私はあまりの疲労に身体を起こすことも億劫で、しばらくぼんやりとベッドから見える窓のカーテンの色を見つめていた。

 やがて、生理現象でどうしても身体を起こさなくてはいけなくなり、やっとの思いで、私は身体を起こし、ベッドから足を下ろした。
 いつの間にか、私の身体には薄い寝巻きのようなものが着せられてあって、なんだか分からないがため息が漏れた。

「い…っ、いたた…」

 聞こえる自分の声がどことなくハスキーで、声が枯れているのが分かる。確かにちょっと喉が痛い。
 しかも、身体中があちこちきしんで悲鳴をあげているようだった。
 よろよろとバスルームに辿り着き、扉を開けると眼前の鏡に、私は一瞬「…?」となった。

「怪我でも…した?」

 寝巻きから見えている胸元に赤い色が見えた。なんだろう?と思って、少し衣服を下にずらして、私は呆れた。

「何、考えてんの?」

 胸元だけではなかった。ほぼ全身至るところにキス・マークが刻まれていたのだ。後ろを向いて背中を鏡に写してみて、更に私は、はあ…とため息が出た。いつの間に…。

「自分の所有物だと思ってた女を、他にも欲しがる男がいるってことに混乱してんのかな?」

 ‘恋’のひとつもしてみたくはないか?と、やつは言った。だけど、私は、憧れはしたけど、実はあまりそういう激しいものも熱いものも持ってない気がする。特に、こうやって現実的にそういうことに絡んで無駄に理不尽な目に遭うと余計に。

 劉瀞って見かけに寄らず、嫉妬深いんだろうか?
 それとも、単なる所有欲? 支配欲?

 用を足して、ベッドに戻ると、さっきは気付かなかったが、枕元に何か紙切れが置いてあった。
『連泊することにしたので、好きなだけ休んでから、下のレストランで食事を取って(部屋番号を告げれば良いです)出かけてください。夕方までにはこの部屋に戻ること。』

 龍瀞の字を初めて見た。
 けっこう綺麗で繊細な字を書くんだな、と私は思った。殴り書きではなく、どことなく品のある丁寧な流れで書かれてあった。

「でも、今日は弥生は仕事だし、私、一人で何しよう?」

 呟いてはみたが、せっかくだから外へは出ることにした。
 今度はシャワーを浴びるためにバスルームへ入り、私は出かける支度を始めた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


前回の私のコメントへのご返信、興味深く読ませていただきました!
fateさんの意図する世界に近いところまで潜れたのかなーと思って、嬉しかったです。

オトナのいい男が嫉妬深いっていうのも好きな設定ですたつひこです。キスマークたくさんっていうのが子供じみてていいですね~!
美咲はこれから偶然庄司に会うことになるんじゃないか、なんて勘ぐってます。楽しみにしています!
#746[2011/11/30 13:12]  たつひこ  URL 

たつひこさまへ

たつひこさん、

作品は、作家の手を離れて読者さまと向き合ったとき、別の命を吹き込まれるものですね。
そうやって、世界は広がり、それを受け止めた作者は、また新たな世界を切り開いていく。
そんな、共同作業のような気がします。
深いご感想をいただいてときは、描いた本人がはっとするものですし、そこに新たな息吹をいただく。
そんな気がして、感想を残すことも、ご感想をいただくことも、またその返信もものすごく楽しい作業です。
というか、今、ほとんど執筆していないので、それのみです(^^;

ちょっと12月初旬、まぁ、明日からですが、しばらくネット環境にいられないかも知れませんが、『スムリティ』だけは予約投稿しておりますし、いただいたコメントへの返信だけはなんとかさせていただきたいと思います!

#750[2011/11/30 20:45]  fate  URL 

すでに、かなりせつない・・・。

俄然、この「総帥」という人物に興味が湧いて来ました。

物語の始まりが、この「総帥」の無体な(?)振る舞いからだったので、ちょっと恐ろしげに感じていましたが、本当にこの施設は、高級託児所みたいなところなんですね。
美咲以外の子供たちは、のびのびとしていてしっかりと「外」で生きていけるだけの人間に育てられていて・・・。

なのに、どうして美咲にだけはこんなにも独占欲?支配欲?そういうのをぶつけてくるのかしら・・・。
どこへ向かっていくのかまるっきり見えないスリルを味あわせていただいてます!(^^)


あぁ気づけば「師走」なんですねぇ。
fateさんもお忙しいのか・・・。
ちょっと寂しいですが(すっかりfateさんがくださるコメントに病みつきになってます)、いい子で(?)待ってます!
#752[2011/12/01 01:08]  秋沙   URL  [Edit]

秋沙さまへ

秋沙さん、

おおお! 切ないですか???
なんとなく嬉しいです。
これ、切ないんですよ、fateは。描いててすでにいろいろ切なくて。

歯切れが悪いですが、すぐにネタバレしそうなので(^^;
秋沙さんの世界もどんどん進んでいるようで、怖々他の方のコメントを覗いたりしておりました~

fateの世界の‘男’って基本的に独占欲強いようですな。
逆に女の子が淡白にあり過ぎる。
だから清浄な恋愛が成立しない。
なんとかしないとね(--;

#754[2011/12/01 08:10]  fate  URL 

>なんとなく、fate worldはfateが考え出して作り出している世界ではなくて、そこにある世界を覗いて文章に起こしているだけ

これはやはり、凄いですね。
ふつうは一生懸命考えて作り出すと思うんです。
fateさんには物語の神様がついているのでは。
そしてその神様に操られて小説を書いている…。

劉瀞というひとは、かっこいいですね。
こういう悪役?は好きですわ♪
彼が好きだという理由のひとつに、栗本薫さんの「魔界水滸伝」に出てくる北斗多一郎に似ている、というのがあります。この人は冷徹な性格なんですが、実は愛を求めていた、というキャラでして、劉瀞にもそんな匂いを感じます。

美咲ちゃんはけっこう劉瀞に反発心をもっているみたいだけど、劉瀞自身が美咲ちゃんのことをもう少し幼いころから「調教」すれば、もっと美咲ちゃんは従順(性の奴隷のような)になったのかも、と危ないことを考えてしまいました ^^;

うーん、どうしよう。美咲ちゃんが羨ましく思えてしかたない。
#1312[2012/01/14 10:24]  西幻響子  URL  [Edit]

西幻響子さまへ

西幻響子さん、

今回、なんだか爆笑しまくりでした(^^)
類友現象と言いますか。いや、それを言ったら西幻さんに失礼ですが(^^;

> fateさんには物語の神様がついているのでは。
> そしてその神様に操られて小説を書いている…。

↑↑↑いやいやいや、ですから、fateが憑いている悪霊なんですって。
神様じゃないところがミソなんだなぁ。
っていうか、プロットをきちんと書かれる方の方がすごいですヨ。たつひこさんもおっしゃってましたが、プロットがあった方が進めやすいそうですから~

> 栗本薫さんの「魔界水滸伝」に出てくる北斗多一郎に似ている、というのがあります。この人は冷徹な性格なんですが、実は愛を求めていた、というキャラでして、劉瀞にもそんな匂いを感じます。

↑↑↑おおおお! と感動はするけど、実際読んだことはないんだ~
でも、知ってます、それ!
実は愛を求めていた…←あああ、これって、fateのキャラでもキーワードのようだ。劉瀞は、でも、まだマトモに育っている方だと思います。あくまでも比率の問題ですが(^^;
何しろ…
いや、ここで言っちゃいかんっつーの。

> 美咲ちゃんはけっこう劉瀞に反発心をもっているみたいだけど、劉瀞自身が美咲ちゃんのことをもう少し幼いころから「調教」すれば、もっと美咲ちゃんは従順(性の奴隷のような)になったのかも、と危ないことを考えてしまいました ^^;
> うーん、どうしよう。美咲ちゃんが羨ましく思えてしかたない。

↑↑↑超! 爆笑っ
それをやったらハナシが違うくなってしまう~
つまり、そこまで劉瀞が病んでいないんですな。忙しいし。で、ここには出て来ないのですが、彼には良識の塊のような側近がくっついているので、なかなか好き勝手は出来んのです。
彼がちょっといない間…の空隙がこの物語かな?
と、今、思いついた。

‘彼’もけっこう良い男です。へへへへ。

美咲ちゃんが羨ましい。おお、それを思ってくださる方が現われるとはっ
fateは感激です~
でも、それって、かなりfateと感覚が近いってことで、アブナイ世界への招待状ですぜぃ。

#1314[2012/01/14 14:12]  fate  URL 














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