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Stories of fate


スムリティ(R-18)

スムリティ (森の外) 7

「おう、美咲。お前まったく変わってないなぁ!」

 待ち合わせ場所だという何とかっている銅像の前で弥生とおしゃべりしていると、不意に後ろから背中を叩かれる。

「いったいなぁ!顔見る前にどうして変わってないって分かるのよ!」

 振り返って庄司を見上げると、ビシッとスーツを着て、サングラスをかけた大男がそこにいて、私はびっくりした。元からまあまあ良い顔をした男ではあったが、正装した姿は何割か増しカッコよく見える。しかも、目がサングラスに隠されているので、どこか怪しい。

「久しぶり!今日は社会見学だって?」

 私の動揺には構いもせず、庄司は笑って弥生にも挨拶し、「こっち、こっち。」とすぐにどんどん歩き始める。

「ランチにはぴったりの店、案内するよ。」
「え?ちょっと待ってよ。」

 弥生は苦笑しながら、慌てる私の手を取って彼の後ろを歩き始めた。

「もう少し落ち着いて挨拶とか出来ないの?」

 私がぶつぶつ言っているのを聞いて、弥生は微笑んだ。

「庄司は忙しいからね。」
「なんか、まあ頑張ってるみたいだね。普通の人みたいに見えるよ。」
「うん、私もこうやってたまにランチを一緒に出来るのがせいぜいだもん。」

 庄司は、相変わらず大きな声で賑やかにいろんなことを話し、私が何でも感動して驚いている様子を無遠慮に大声で笑う。見かけは変わっても、中身は本当に全然!変わってないじゃん。かなりムカッとして私は文句を言ってみる。

「いや、懐かしくてほっとするよ。お前は変わるな。美咲が変わらずにいてくれることは俺たち『外』の人間にとって救いであり、励みだよ。いつでも原点に還れる。大切なことを忘れずにいられる。」
「何のことよ?」
「『外』はいろいろあるってことさ。」

 ほんの少し彼の光が陰った気がして、ふと、私は、あれ?という気持ちになる。この感じ…、なんか、知ってる気がする。しかし、それを反芻する間もなく、更に賑やかな通りの小さな店の前で、彼は「ここだよ!」と嬉しそうに声をあげていた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


なんというか・・・

妙な「明るさ」のあるお話ですね。
まだこの先の展開が全く見えないから、なのかもしれませんが・・・。

子供の順応性ってすごいんだな、と思ってしまいました。
世間一般から見れば悲惨な人生かもしれないけれど、それが本人にとってはただ一つの、自分の人生。それが「普通」。閉鎖的な環境に育って、でも、「外」がある事を知りながら過ごして・・・

う~~~~ん。fateさんの想像力、創造力に感動します。
「育てられなかった子供」と言ったら、想像力の無い私は、皆一様に暗い目をして、自分の人生を呪っているんじゃないかくらいにしか思えずにいたんですが、fateさんのお話の登場人物は、limeさんのところの「陽」や「RIKU」とも共通していて、自分の人生をごく当たり前のように受け入れて生きていて、素直で明るくて、「優しい」んですよね。

私ももうちょっと、人の心がわかる人間にならないと、小説なんか書いちゃいかんなぁ、と思ってしまった(^^;
#740[2011/11/30 00:17]  秋沙   URL  [Edit]

Re: なんというか・・・

秋沙さん、

子どもの順応性。確かにすごいですね。そして、fateは何故か‘虐待’ということに妙に関心を抱いているせいか、そういう事件には敏感だし、本気でなんとか出来ないものかと考えました。
というか。
これは、かなり特殊です。ここは、保育所とか孤児院とか、それのかなり最高級バージョンを考えた施設なので、美咲ちゃんはけっこう文句を言ってるけど、fateが理想とすることをやらせてみた施設なので、虐待されたり遺棄されたりしてここに拾われた子は、だいたいマトモに育つ…予定です。かなりのプロが子ども達の面倒を愛情をもってみてくれているので(^^)

> 私ももうちょっと、人の心がわかる人間にならないと、小説なんか書いちゃいかんなぁ、と思ってしまった(^^;

↑↑↑何をおっしゃるウサギの秋沙さん。fateがヒトの気持ちなんて分かると思うなよ~
fateは理想を語っているだけ。希望的観測を述べて、夢の世界を漂っているだけです。
現実が世知辛くて人間の本質は綺麗ななけじゃなくて(ヒトに寄るが)悲しい事件や不穏な世の中なので、せめて物語の中だけでも‘救い’が欲しいというだけです。
一瞬、良い気持ちになれれば良いな…、と言いながら‘倒錯’世界を描くのは、fateの‘闇’が深いせいですが(^^;


#742[2011/11/30 08:11]  fate  URL 














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