アダムの息子たち(R-18)

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アダムの息子たち (プロローグ) 1 

アダムの息子たち(R-18)

<※:R-18>

~異形の神の子~

 聖書から抹消された異端の神の子孫がいた。
 アダムが自らの子孫と交わって生まれた人の形をした魔物。

 母親は誰の娘だったのか、もはや記録はない。その母親ごと、史実から消えてしまったのだ。

 その子どもは、美しい若者に成長し、一見するとどこもおかしなところのない普通の青年だった。ただ、彼はその姿から年をとらなかった。寿命が尽きて‘死’を迎える瞬間まで、彼の姿は若々しく、その心も若者のままだった。

 人々はその奇妙さを恐れた。
 羨望が渦巻いた。

 彼が生ませた子どももまた、成長して父親に負けない美しい青年となった。そして、彼もまたそれ以降年を取らずに死んでいった。

 その気味の悪い血筋は、そこで絶えたかに思われた。
 それで、史実からは抹消された。
 しかし、彼の子孫は秘かにその血を受け継ぎ続けていた。
 何千年も、脈々と。

 一つ不思議なことは、彼の子孫は、必ず男児しか生まれないということ。命を受け継ぐべき女児は決して誕生しない。故に、その一族の男たちは、外へ出て女性をさらって来なければならない。自らの命を受け継ぐ子宮を得るために。

 それは或いは、濃くなりすぎた‘血’が生んだ初めての遺伝病の類だったのかもしれない。遺伝子の重複や欠損など、老化のスイッチが入らない仕組みを得てしまった結果と、男性化を促すホルモンの過剰。

 それでも、そういう知識のなかった時代に、彼らは異端だった。生命の枠をはみ出た悪魔の使いと恐れられ、迫害を受けた。

 そうして、その一族は恨みを引き継いでいく。
 人々を呪い、憎み、同じ神の血を分けた子孫だったということを忘れていく。

 
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アダムの息子たち (罠) 2 

アダムの息子たち(R-18)

 小枝子は、白い肌をした髪の長い、一見すると良家のお嬢様風の外見をした、ちょっと華奢な少女だった。
 彼女は、ごく中流家庭の二人姉妹の次女として、金城家に生まれた。

 多少、身体が弱くて風邪をひき易い体質であることを除けば、特に問題のない学生時代を過ごし、今年、短大に入学したばかりだった。

 受験と入学に関わる慌ただしさ、気忙しさを抜け、今、やっと大学生活も落ち着いてきた5月の終わり。親しく話せる友人はまだ出来なかったが、そこそこ周りとはうまくやって、楽しいキャンパスライフを送っている。



 彼女は、一つ気になることがあった。

 その短大のキャンパスは隣接する4年制の大学と一部の講義室を同じくし、校舎も学食などが共同である。経営者が同じなのだろう。

 その、同じ構内の恐らく4年制の大学の学生らしい・・・ということしか分からないのだが、ここのところ、小枝子をじっと見つめる視線を感じることがある。その視線の先を見ると、必ず、同じ男が立っている。綺麗な顔立ちをした、だけどぞっとするような冷えた目をする青年だった。

 見据えられると、足が震え、その場に崩れてしまいそうになる。
 背筋に冷水を浴びせられたような感覚を得る。
 小枝子は怖くなって慌ててその場を立ち去る。

 彼は、逃げる小枝子を追うことはしないし、彼女に近づくこともなかった。それでも、小枝子は怖くてたまらなかった。

 まるで、憎んでいるかのような鋭く、氷のように冷たい視線。
 彼女には、恨まれるような覚えはないし、彼にいつかどこかで会った記憶もなかった。

 誰だろう?
 どうして、私をあんなに冷たい目で見つめるのだろう?

 それは、殺してやる、と言わんばかりの憎しみの色に感じられた。



 
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アダムの息子たち (罠) 3 

アダムの息子たち(R-18)

 小枝子は、通うには遠いその短大に入学するのと同時に、大学の近くにアパートを借りていた。そのアパートは、その短大の学生、しかも女性だけがすべての部屋を占めている、ある意味寮に近い感じだったので、両親が安心して契約してくれたのだ。

 そこの学生たちはしょっちゅう飲みに出かけていて、小枝子もよく声を掛けられる。しかし、お酒に弱い彼女は、滅多に仲間に加わることはなかった。

 しかし、ある金曜日の夜、予定されていたメンバーが突然5人ほど抜けてしまい、予約席の確保が難しくなってしまったので、どうしても、と泣きつかれ、小枝子は渋々出かけることを約束してしまう。

 男女混合のいつもの飲み仲間だった彼らは、他にも手当たりしだい声を掛けて歩いているようだったが、大抵の学生はバイトやすでに他の予定が入っていたりで、なかなか人数確保は厳しそうな様相だった。

「お願い、最初に顔を出すだけで良いから。」

 アパートの隣の部屋の子に頭を下げられて、小枝子は諦めて頷いた。

 そのとき、またも視線を感じてぎょっとして振り返ると、いつもの男が同じように彼女を見ていた。小枝子は、本当に心の底からぞっとした。しかし、彼は小枝子に何をしているわけでもないので、それほど親しい友人のいない彼女は誰に相談して良いのかも分からない。

 小枝子はただ、その場を走って逃げ出す以外、出来ることはなかった。



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アダムの息子たち (罠) 4 

アダムの息子たち(R-18)

 指定された時間にその飲み屋に行くと、もう、だいたいのメンバーは揃っているようだった。その日は一つの畳の個室を予約していたようで、最低限の人数確保が必要らしかったのだ。

 同じアパートの女の子たちと、彼女らと仲の良い同じサークルの仲間たち。なんだか、入り込みにくいなあ、と小枝子は思いながらも、勧められて席に就く。

「じゃ、乾杯しよっか。飲み物オーダー取るよ~。」

 入り口近くに席を取っていた男の子が叫び、皆、口々に、生ビールだとかウーロン茶だとか頼み始める。
 ウーロン茶でも良いのか・・・とほっとした小枝子もそれを頼む。

「聖凛(せいりん)は?」
「ああ、もうすぐ来るだろ?あいつは生で良いよ。」
「え?聖凛も来るの?珍しい~!」

 聞き覚えのない名前に、小枝子はほんの少し、眉を寄せた。何か、引っ掛かった。

「・・・誰?」

 小枝子は隣の席の子に聞いてみる。彼女は小枝子を誘った張本人、部屋が隣の奈々子という同じゼミの子だ。高校時代から付き合っている彼氏が4年制の大学の方の学生である。彼女は、デートのない夜はサークル仲間と遊んでいる。けっこう、遊んでいる子なのに、瞳は妙に冴えてきりっとした光を湛えている。頭は良い子なのだ。

「聖凛?ああ、変わった名前でしょ?でも、韓国人とかじゃないよ。ちゃんとした日本人。顔を見ればああこの人、って分かるよ。学内でもけっこう目立つ男だから。」

 それ以上聞いても仕方がない。小枝子は少し落ち着かない心を抑えた。
 それは、予感のような、遠い記憶のような、曖昧な、懐かしいような不思議な感覚だった。

 やがて現れたその男は、紛れもなく‘彼’だった。
 小枝子は息が止まるかと思うくらい驚いた。

 聖凛は、小枝子にはまったく見向きもせずに、一同に軽く微笑んでみせる。その瞳の暗さは変わらなかったが、雰囲気は一段柔らかかった。あの冷たい瞳を思わせるような冷酷な空気はそのとき、感じられなかった。それでも、小枝子は何か背筋にぞくぞくするものを感じて身体が冷えていくのが分かった。

 聖凛は奥へ進もうとはせず、ごくさり気ない様子で、端にいた小枝子の隣に席を取った。それからすぐに乾杯が始まり、もう誰も小枝子の様子のおかしいことに気がつく者はいなかった。

 小枝子は震えながらうつむいて、出来るだけ隣の男と目を合わせないようにしていた。

「小枝子、飲んでる?次はちょっとアルコールも頼んでみなよ。酎ハイの軽いやつなら大丈夫だから。」

 奈々子が明るく声を掛ける。

「聖凛は?生のお代わり要る?」
「そうだね、頼むかな。」

 彼の声は低く、よく響いた。まるで、地の底から地獄の使者が生ける者を呼ぶような。
 この声を、いつか、聞いたことがある・・・。

 身体の奥で警鐘が鳴った。

 いつだった・・・?




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アダムの息子たち (罠) 5 

アダムの息子たち(R-18)

 運ばれてきた飲み物を、小枝子は長い間、手に取ることが出来なかった。隣に座る聖凛は、普通に周りと話していたし、小枝子に関心を示すような素振りは見せなかったが、彼女は金縛りにでもあったように、動くことも出来なかったのだ。

 もう、帰ります、と何度立ち上がろうと思ったか。それなのに、小枝子にはその勇気がなかったのだ。

 皆、そろそろ本格的に酔いがまわってきて、賑やかさに一層拍車がかかる頃、聖凛がふとトイレに立ち上がった。

 小枝子は、ほっと呪縛が解けたように顔をあげ、カラカラに乾いていた喉を潤そうと、もう氷のすっかり溶けた酎ハイを一気に喉に流し込む。その中に何が混入されていたかも知らずに。

 そして、やっとのことで言った。

「あの、ごめんなさい。そろそろ帰ります。」

 幹事にお金を渡し、彼女はそそくさとその場を離れた。そして、店の外に出て外の風に当たった瞬間、ほっとして気が緩んだのだろうか。不意にくらりと眠くなってきた。

 そのままふらふらと帰りかけ、次第に足がふらついて立っていられなくなってくる。

 どうしたんだろう?

 確かにお酒には弱い彼女だったが、今日は酎ハイをグラスに一杯飲んだだけだった。緊張と恐怖の余り、酔いが回るのが早かったのだろうか・・・。

 段々、目の前が暗くなってきた。
 小枝子は、もう立っていられなくなってその場にしゃがみ込む。

 もう、意識は大分怪しかった。
 不意に、背後から人の近づく気配がして、小枝子は、身体がふわりと抱き上げられるのを感じた。

 誰?
 そう思ったものの、もう、目は開かなかった。
 誰・・・?
 抱かれて運ばれるゆらゆらとした感覚。

 やがて、その人物はタクシーを捕まえたらしかった。車に乗せられる気配。そして、行き先を告げる声。
 その声に、小枝子は愕然とする。

 聖凛?

 声をあげようとしたが、小枝子の身体はすでに指先一本動かせない睡魔に捕らわれていた。

 イヤ!誰か・・・助けて・・・!

 心がいくら叫んでも、それは言葉にならなかった。
 そして、そのまま、彼女の意識は途切れた。



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アダムの息子たち (契約) 6 

アダムの息子たち(R-18)

 小枝子が目を開けてみると、見慣れた部屋の天井が視界にあった。ぼんやりとした状態で、彼女はここは自分の部屋だと思う。ベッドのシーツの感触も、違和感はない。

 あれ?・・・私はどうやってここへ帰って来たんだっけ?
 確か、奈々子たちと飲んで・・・。

 そこまで考えて、小枝子は顔をしかめた。なんだか、頭の奥に鈍い痛みがあった。

 二日酔い?
 帰り道の記憶がなかった。
 そもそも、そんなに飲んだ覚えはない。

「やっとお目覚め?」

 不意に、耳元で男の声がして、小枝子ははっとする。瞬間、全身が緊張するのが分かった。

「・・・誰っ?」

 かすれる声で小枝子はその声のした方向に視線を移す。
 そこにいたのは、聖凛だった。

 彼女のベッドのすぐ脇の壁に寄りかかり、腕を組んで彼女をじっと見下ろしていた。小枝子はぞうっと背筋に冷たいものを感じ、身体が強張る。

「・・・どうして・・・ここに?」
「君をここまで送ってあげたんじゃないか。」

 聖凛は冷たい微笑を浮かべる。
 言われて、小枝子は帰り道で突然睡魔に襲われ、道端に倒れそうになったことを思い出した。

「・・・あの・・・」

 お礼の言葉を言わなければ、と思って口を開きかけたのに、その言葉が喉元で止まってしまった。身体を起こした彼女は、何も身につけていなかったのだ。

「・・・っ?」

 小枝子は、あまりの状況に自分の身体を抱きしめてかがみ込んだ。がちがちと音が聞こえるくらい身体が震える。

 何故、こんなことになっているのか、さっぱり分からない。

「確かめただけだよ、小枝子、君が約束の、俺の探していた女なのかを。」

 聖凛は、彼女の怯えた様子には構わずに言う。

「君は、黒田家の巫女の一族の末裔だね。」

 小枝子は、黒田という名前に覚えがあった。祖母の旧姓が確かそんな名前だった。

「俺を殺そうとしたあのばあさんの曾孫だろう?」

 そう言った彼の声のトーンは一気に低くなった。それはぞっとするような冷たい声だった。

「・・・こ・・・殺そうと・・・?」

 小枝子は、その、物騒な言葉が自分にまったく結びつかなくて、ただ震える声で繰り返してみた。

「そう。確かに、俺は、彼女に殺されかけた。お陰で、自由に動けるようになるまで、随分かかったからね。」

 その声はどこまでも冷たい。感情のカケラもないような、湖の底から響くような声だ。

「ねえ、小枝子・・・。」

 聖凛は、彼女に近づいてきて、うつむいて震えている彼女の顔を覗き込む。

「君に、その対価を払ってもらうよ。それで、君の一族への報復はおしまいにしてあげる。そういう、約束だったよね?」



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アダムの息子たち (契約) 7 

アダムの息子たち(R-18)

 ぐい、とその手で小枝子の顔を自分に向けさせ、聖凛は微笑んだ。それはぞっとするほど美しい笑顔だった。

「人にむき出しの殺意を向けられる気持ちって分かるかい?自分に納得出来る理由が何一つ見つからないのに。」

 小枝子は恐怖の余り、声も出なかった。そして、そのどこまでもしんと冷えた瞳に見据えられると、呼吸すら苦しくなってくる。金縛りにあったように、身動き一つできなくなる。小枝子には、もう、彼が何を言っているのか理解できなくなっていた。声が響いてくるだけで、それは意味を成さない音楽のようにしか聞こえない。

 曾祖母のことなど、小枝子は知らなかったし、詳しい話を聞いたこともない。

 だいたい、そんな過去のことを、つい昨日のことのように語る彼のその違和感に、彼女は目の前にいる彼が、この世のものとは思えなかった。

「君が、契約の履行に同意するなら、すべての罪を忘れてやるよ。それとも、今、ここで八つ裂きにされたいかい?」

 聖凛は、うっすらと笑みを浮かべる。

「殺して欲しいなら、今すぐそうしてあげるけど?」

 小枝子は恐怖に目を見開いた。そして、激しく首を振って許しを請う。

「イヤ・・・、許して・・・お願い。」
「では、契約は成立、だね?」

 契約。それが何を意味するのか小枝子にはまったく分からなかった。しかし、二者択一で‘死’とそれ以外を選べと言われ、頷くしか、彼女に道はなかった。

「良い子だね、小枝子。」

 聖凛は目を細める。

「履行は次の新月の夜から。それまで、‘呪’の印を刻んでおくよ。決して俺から逃げられないように。」

 彼の手が小枝子の身体をすうっと撫でる。額から腕へ、そして腹部、足先へと。そして最後に彼は両手の母指と示指で円を結び、その中心にふっと息を吹きかけた。その瞬間、小枝子の額には割れるような痛みが走り、彼女は息が出来ないくらいの衝撃を受けた。悲鳴すらあげられない激しい痛み。

 そして、それは次第に焼けるように熱くなって、頭の奥に沈んでいく。
 ぐらり目の前の聖凛の姿が揺れ、視界が真っ暗になる寸前、彼の瞳に憎しみの炎が宿るのが見えた気がした。
 



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アダムの息子たち (契約) 8 

アダムの息子たち(R-18)

 その夜のことを小枝子はほとんど覚えていなかった。聖凛が何か記憶を操作したというより、むしろ小枝子自身の防御本能が記憶を曖昧にさせたのだろう。

 ただ、翌朝目覚めて、自分が裸で眠っていたことに羞恥をおぼえ、玄関の鍵が開いていたことに慌てた。
 飲み会に参加するのはもうよそう、と彼女は考えた。

 不思議なことに、小枝子はそれ以来、あれほど怯えていた男の視線を感じなくなった。小枝子を見つめていた男は、もう、彼女に一切関心を示さなかった。ふとその男が近くにいることを知ってぎょっとしても、彼の方が、小枝子のことを見ようともしていないのだ。

 さっぱりわけが分からなかったが、それまでのことは、もしかして気のせいだったのかと彼女は考えるようになっていた。



 しかし、その夜から時々、彼女は不思議な夢をみるようになった。

 夢の中で、小枝子は小さな少女に戻っている。
 そして、背の高い、真っ黒なコートに身を包んだ男の姿が見える。顔は見えないのだが、小枝子は彼を知っているようだ。

 男は、神社の境内のような場所で、小枝子が一人遊びをしているのをしばらく見守ったあと、彼女を呼ぶ。小枝子は何のためらいもなく彼に近づき、彼の腕に抱きあげられる。

 男の表情はまったく分からないが、そこまでは特に奇妙な感じはない、ごく普通にありそうな光景だった。やがて、男は彼女を抱いたまま小さな社の中に入っていく。そして、そこで小枝子は男の手で一枚一枚衣服をはがされていき、そして、すっかり裸にされた彼女は、男に何かを言われ、素直に頷く。

 男の手が、彼女の身体に伸び、少女はさらさらと何かを描くような男の手の動きにくすぐったくて笑い転げる。男は特に不快そうな様子もみせず、淡々とその作業を続ける。そして、全身に施されたその呪文のようなものが、最後にカッと紅く熱を帯び、それまでくすくす笑っていた小枝子は、あ・・・っ、と声をあげる。

 しばらくぼうっと光っていたその紋様はやがてすうっと彼女の肌の奥に吸い込まれるように消えていく。
 瞬間、小枝子は気を失った。

 そして、その出来事自体を、彼女は覚えていない。
 いや、それ自体、単なる夢で、実際にあったことではないのかもしれない。

 しかし、その夢は寸分違わずに繰り返し訪れ、目覚めた小枝子を得体の知れない不安に陥れていた。




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アダムの息子たち (新月) 9 

アダムの息子たち(R-18)

 6月の半ばが過ぎ、その夜はうんざりするような梅雨の蒸し暑い雨だった。その日は土曜日だったのに、朝からしとしとと雨が降り続き、小枝子は外へ出かける気も起こらなかった。夕方から益々強くなった雨。その激しい雨の音は、テレビの音声すらかき消してしまうほどで、小枝子は、もう諦めてテレビのスイッチを切った。

 真夜中になっても雨は少しも止む様子はなかった。なんだか、その音の憂鬱さに、小枝子はなかなか寝付かれずにいた。もうすぐ午前零時という頃だった。

 不意に玄関の鍵ががちゃり、と音を立てた気がした。
 ぎょっとして、玄関の扉を凝視する。

 気のせいではなかった。扉は、そのまますうっと開いて、闇の中に人影が見えたのだ。
 小枝子は悲鳴をあげた。しかし、その声すら雨の音に吸い込まれ、どこにも届かないようだ。

 その真っ黒な人影は、玄関に立ち、そして、後ろ手で中から鍵を閉めなおした。
 小枝子は、再び叫び声をあげ、ベッドから転げ落ちそうになりながら、窓の方へとじりじりと後退する。

 闇をまとった人影は、音もなく近づいてくる。そして、暗い輪郭の中に目だけが光って見え、その鋭い視線に撃たれたように、小枝子は硬直した。

 誰?と叫ぼうにも、助けを求めようにも、もう身体が動かず、そして声も出なかった。

「約束だよ、小枝子。」

 その低い声に聞き覚えがあった。そして、上着を脱いだ相手の顔がうっすらと確認できた瞬間、小枝子はすべてを思い出していた。

「・・・聖凛・・・。」

 彼は、冷たい笑顔を浮かべた。まるで死人のような、墓の中から蘇ってきた人のような、暗い顔色で、紫の唇で。

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アダムの息子たち (新月) 10 

アダムの息子たち(R-18)

 時折、雷が光る豪雨の夜。

 小枝子は、あまりの恐怖に頭が真っ白になっていた。近づく男の姿を見つめながら、どうしたら逃げられるかという計算すら浮かばなかった。

 足音のしない彼の動き。いや、単に雨音にすべての物音がかき消されていただけかもしれない。彼は空気のようにふわりと彼女のそばまで進むと、ばさりと更に服を脱ぎ捨てる。そして、上半身が露わになった姿で、茫然としている小枝子の顔をじっと見据える。

 茫然としている間に彼の手が小枝子の喉元に伸び、そのまま彼の腕に捕えられて組み敷かれた瞬間、彼女の中に初めて嫌悪と恐怖が一気に湧き起こり、悲鳴をあげようとした途端、不意に口をふさがれた。

 男の、執拗で深い、溺れそうなキス。小枝子はその気味悪さに必死でもがく。しかし、彼女の抵抗など、聖凛は意にも介さない。どうすれば大人しくさせられるのか、彼はよく分かっている。

 首を絞めるように両手でしっかりと押さえ込まれ、少しでも動いたらその手に力を入れられそうで、まったく逃げることができない小枝子の唇を、舌を、彼は何度も何度も吸い、舐め、責め続ける。たまった唾液を何度も飲まされ、それでも飲み込めなかった液体が、唇の端からどんどん流れ落ちる。

「んんん・・・っ、んうっ・・・」

 ただ、気持ちが悪かったキスが次第に頭の芯を痺れさせていく。絡みつく蛇のように、聖凛の舌はぬめぬめと小枝子の中で蠢きつづけ、口中をくまなく舐めまわされていく。

 もがいていた腕から次第に力が抜け、何度目かの唾液をごくりと小枝子は飲み込む。もう、気持ちが悪いとか、汚いという意識は失われている。ただ、熱く甘く感じるその液体を、喉の奥に流し込まれるまま飲み続けるだけだ。

 不意に、聖凛の手が、小枝子の下半身をまさぐっているのを感じる。彼の手はするりと正確に、彼女の茂みの中、敏感な突起を探り当てる。そして、そこをゆっくりと刺激し始めた。小枝子のふさがれている口から、声がもれる。

「んん・・・っ、ん・・・う・・・っ」

 聖凛の手の微妙な動きは、あっという間にかああっと小枝子のそこを熱くし、じわり、と何かが漏れ出てくるのを感じさせる。

「・・・っ?」

 ぐい、という感じで聖凛の舌が喉の奥まで突き刺さる。びくりと小枝子の身体がはね、逃れようと小枝子の腕が彼の身体を必死に押す。

 やっと、聖凛は小枝子の唇を解放し、彼女は喘ぐように空気を吸った。ほっとしたのもつかの間、いつの間にボタンを外されていたのか、露わになっている胸に、生暖かいものを感じ、聖凛の舌が小枝子の胸を舐めていた。白い肌にゆっくり吸い付いてキスマークを刻み、乳首をくりくりと舐めまわし、かと思うと不意に乳房に歯を立てる。

「きゃああっ」

 驚いて声をあげると、静かに、と言わんばかりにその唇をキスでふさぐ。その間にも、下半身への刺激は止むことはない。小枝子は身体ががくがくと小刻みに震え始めるのを感じた。突然、下着を剥ぎ取られる感覚に小枝子は怯えて声をあげる。



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アダムの息子たち (新月) 11 

アダムの息子たち(R-18)

「あぁ・・・っ、やめ・・・て!・・・イヤ!」

 聖凛は小枝子の両膝の間に足を滑り込ませて、抵抗をふせぎ、次第に液体の漏れ出る穴へ指を侵入させていく。刺激を受けるとその液はますますとろりと湧いてくる。そして、乳首への舌の刺激はますます激しさを増す。もう、触れられるだけで、背筋に電流が走ったように背中がはねる。

 びりびりと下半身から熱が背筋を通り抜ける。緩く、激しく、彼の手は小枝子の身体の反応を完全にコントロールしている。もう、彼女には、自分ではどうすることも出来ない。

 やめて!・・・やめて!!・・・どうして?

 叫んだつもりが、言葉になっているのかすら分からない。

 聞こえている喘ぎ声が誰のものなのか。熱い息遣いは誰のものなのか。身体が不規則に震え、息を整えることが出来ない。次第に高まる身体の熱を、どうして良いのか分からない。

 怖い・・・!!!

 突然、頭上を貫いて何か閃光が走り、その直後、小枝子の身体はつま先までがくがくと震えが走った。そして一気に全身から緊張が抜ける。

 はあはあと喘ぎ呼吸をする小枝子を冷静に見下ろし、聖凛は、今度はもう逆らう気力も残っていない小枝子の両足を持ち上げ、大きく開かせると、その太ももの間をゆっくりと指で押し広げ、茂みの中を観察する。

 恥ずかしい部分をじっと見られている感覚に、小枝子は真っ赤になって、足をばたつかせる。

「あ・・・あ!・・・イヤ!・・・離して・・・っ」

 それを両手でぐい、と押さえつけると、聖凛は不意にそこに顔を埋める。そして、先ほど指先で丹念に愛撫した場所を今度は口全体でゆっくりと吸い付く。

 びくん!と小枝子の身体が反応する。

「・・・お・・・願い・・・、やめ・・・」

 びくびくと身体は震え続け、小枝子は頬を涙が伝っていることを知る。
 どうしてこんなことをされるのか分からなかった。

 そもそも、彼は誰なのか?
 小枝子は彼のことを名前以外まったく知らない。

 聖凛は、小枝子の声など聞こえていないかのように、音を立てて溢れる蜜を吸い取る。ごくりとおいしそうに彼の喉が鳴り、次の瞬間には穴の奥へと深く舌を差し入れていく。

「ひゃああっ・・・いやぁぁああっ」

 一旦悲鳴をあげた小枝子だったが、すぐにそれは喘ぎ声にとって変わられる。何度も抜き差しされる舌は、小枝子の中を熱く刺激していく。

「あ・・・っ、あぁっ・・・あ、あ、あ、あぁぁ・・・っ、んんっ・・・」

 びくびくと身体ははねて反応する。もう、どんな刺激も過剰に頭に突き抜けていく。漏れ続ける声すら、もう、自分では抑えることも出来ない。身体はまったく統制を失い、ぴんと絃を張った楽器が、奏者に奏でられてその絃を震わせ、音楽を奏でているに過ぎなくなってくる。

 楽器に意思も権限もないように、小枝子には自分の身体を自らの意思で動かすことも、増して止めることも出来なかった。



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アダムの息子たち (新月) 12 

アダムの息子たち(R-18)

 どのくらいの時間、そうやって弄ばれたのか分からない。
 叫び続けた声が枯れそうになり、反応させられ続けた身体が麻痺してくる頃、聖凛は不意にぐいという感じで自分の熱を小枝子の身体に押し入れてきた。

 もう、すっかり濡れてどろどろに溶けていたそこは、初めて受け入れた男をすんなりと通し、奥へと誘導する。それでも、鋭い破瓜の痛みを感じ、小枝子は声をあげる。

 終始無言の聖凛は、更にそのままゆっくりと腰を動かし始める。深く深く子宮の入り口までを何度も往復し、やがて、激しくその動きを繰り返す。

 時々動きを止めて、彼は小枝子の腰に回した手を自分に思い切り引き寄せる。更に小枝子の中の彼は奥へと突き刺さり、彼女はその痛みに悲鳴をあげる。

 それが不意にふさがれて、小枝子の口が熱く溶けていく。流れ込む唾液。或いはそれは彼女自身の蜜も含まれていたのかもしれない。緩やかに腰を左右に動かしながら、聖凛は丁寧に小枝子の口の中を舐めていく。

 冷静な思考はなく、言葉ももう形を成さない。自分が今どういう状態になっているのか、小枝子にはもう分からない。

 ただ、自分の中に男の存在を感じ、深く舌を絡め合わせて波間を漂っている。ゆらゆらと。
 自分の身体がそこに存在しているのかも、もはや確認出来ない。
 溶け合った二つの肉体が一塊になって円を描いてるだけなのかもしれない。

 ふっと、口に空気を感じて、小枝子は自由になった唇からとろりと熱い液が流れ落ちたことを感じた。それは顎を濡らし、喉を濡らし、シーツに滴り落ちていく。

 もう声も枯れていた小枝子は、熱い吐息をもらすだけだ。

 違和感なく溶け合っていた下半身が次第に焼け付くように熱くなってくるのを感じ、小枝子はただ、その感覚に身を任せた。
 
 揺らされる身体。子宮に感じる痛み。熱くて熱くて焼けてしまいそうな小枝子の中。
 何度も頭の奥に痺れが走り、何度も意識が飛んだ。

 そして、何度目かの真っ白い光が頭上を突き抜けたとき、聖凛が、中で熱い液体を存分に放ったことを感じた。
 それが何を意味するのか、朦朧とした意識の中では思考は形を留めなかった。まだ小枝子の中にびくんびくんとはねる聖凛がいた。

 それをぼんやりと感じながら、そこで小枝子の意識は完全に途切れた。
 もう、空が明るみ始め、あれほど激しかった雨はそろそろ止み始めていた。



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アダムの息子たち (絶望) 13 

アダムの息子たち(R-18)

 小枝子が目を覚ましたのは、もう昼近くなってからだった。

 目を開けたものの、指先一つ、身体もまったく動かなかった。瞳は虚ろで、何の考えも浮かばない。部屋の中に人の気配はなかった。ただ、静かないつもの空間が光にさらされて広がっている。

 夢だったのだろうか?と小枝子は思う。
 何もかも夢だったらどんなに良いか・・・と。

 しかし、全身のひどい倦怠感と、ベッドの脇に捨てられた彼女のパジャマと下着が目に入ったとき、夢ではなかったことをはっきりと知る。

 身体を起こしてシャワーを浴びたいと思ったが、とても動ける状態ではなかった。

 全身が男の唾液でべたべたしているような気がして気持ちが悪かった。足の間が信じられないくらい湿っていて、シーツが冷たい。そして、ちょっと身体を動かそうとすると、身体の奥が痛みに疼いた。

 そろそろと、一ミリずつと言っても過言ではないくらいの慎重さで、小枝子は鉛のように重い身体をベッドから引き剥がしていく。

 心はカラカラに乾いて、涙も出なかった。

 ベッドに座って、そこから一歩踏み出すまで、更に時間を要し、足を一歩前に踏み出すだけでも身体中が痛みにきしんだ。

 裸のまま、冷蔵庫まで辿り着き、小枝子はやっとの思いで中から飲み物を取り出し、むさぼるようにごくごくと飲んだ。細胞の一つ一つに水分がしみわたり、身体がほんの少し生き返った気がした。

 そのままへなへなとダイニングの床に座り込み、小枝子はふうっと息をつく。
 久しぶりに肺にたまっていた空気を吐き出した気がした。

 昨夜の一部始終を思い起こすと、小枝子は身体が震えてくるくらい恐ろしかったのに、どうしても誰かに言って助けてもらおうという気にはならない。

 誰かに知られるのが泣きたいくらい怖かった。
 そして、何か小枝子の中にずっとちくちくと引っ掛かり続けていることがあるのだ。

 それは喉に刺さったトゲのような感触で、普段は分からないくらい鳴りを潜めているのに、何かの拍子に微かに意識に触れる。それなのに、その正体がさっぱり分からない。

 ただ、一つだけはっきりと小枝子には分かっていた。
 これで、おしまいではない。
 ぞくりと背筋が冷える。

 聖凛の目的は、小枝子を一度陵辱して終わるような生易しいものではない。

 ‘契約’と彼は言った。それは一体、いつ交わされたものなのか。そして、小枝子の曾祖母が彼を殺そうとしたというのはどういうことなのか。

 しばらく茫然とそこに座り込んでいた小枝子は、堂々巡りの疑問をなぞることを諦めて、顔をしかめながら立ち上がる。

 そして、うつむいた拍子に雫が一つ床に滴り落ちたことに気付いて、はっと頬を撫でると、そこには涙が伝い落ちていた。

「・・・私は、これからどうすれば良いんだろう・・・?」

 搾り出すような自分の声に、小枝子は、どれだけ自分の心が傷ついていたのかをようやく知る。
 どうして、あんな目に遭うのか、さっぱり分からなかった。
 彼がどうして自分を、自分の家族をあんなにも憎んでいるのか。

 ただ、報復のためにだけ自分を辱め、貶めたのだと思うと、その悔しさ悲しさに打ちのめされる。
 そして、それは恐らくこれからも続くのだ。

 いつまで・・・?
 小枝子は思う。涙がぽたりと床にはねた。
 こんな惨めな思いを一体いつまで・・・?

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アダムの息子たち (絶望) 14 

アダムの息子たち(R-18)

 ほのかに好きになった人はいた。片思いに胸を焦がしたことも。

 でも、小枝子はまだ本当に好きになって付き合った男性はいない。告白されたことはあったが、学校が別になったらあっさり終わってしまった。

 キスもまだ唇に軽く触れる程度のものしか経験がなかったし、まして、男に身体を触られたことなどなかった。女の子同士でも裸を見せ合ったこともない。

 何もかも、本当に初めてだったのだ。

 本格的なキスも、男の手に寄る愛撫も、身体をつなぐことの意味すらほとんど分かっていなかった。自分の身体がセックスに寄ってどうなるのか、その痛みもイク感覚も、何も知らなかった。

 セックスをした・・・んじゃない。
 ただ、陵辱されたのだ。
 好きなように弄ばれ、汚された。

 ぼんやりしていた頭に、やっとマトモな思考が戻ってくるにつれ、次第にはっきりしてくるのは‘絶望’と‘悲しみ’と‘憤り’、そして‘恐怖’だけだった。

 何より、寒くもないのに身体ががくがくと震えてくるほど、怖かった。
 彼の瞳の冷たさは、ずっとずっと感じ続けていた。
 殺したいほど憎いと、ささやかれ続けているようだった。
 涙は次々と溢れ、零れ落ちていく。床に水溜りが出来そうなほどだった。



 やっと落ち着いて、洗濯をしたりシャワーを浴びたりする気になったのは、夕方になってからだった。
 のろのろと服を着て、小枝子はシーツを洗う洗濯機の音を聞いていた。
 呪いのように、重い重い音だった。



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アダムの息子たち (絶望) 15 

アダムの息子たち(R-18)

 それから一月の間、小枝子は茫然と学生生活を送っていた。あれ以来、聖凛の姿も滅多に見かけなかったし、彼は構内では一切彼女に近づいては来なかった。

 それでも、身体の重さだるさが抜けるまで、小枝子は聖凛の凍りつくような冷たいセックスを忘れることが出来ずにいた。講義を聞きながらも、ふと聖凛の声が聞こえてきたり、その姿が目に入ったりすると、身体の奥がきしむように痛む感覚を思い出してしまう。

 その度に、涙がにじんでくるのを必死で押さえた。

 生理が普通にきてほっとした頃、ふと、小枝子は夜の空に浮かぶ月を見て、はっとする。
 『新月』と確か聖凛は言っていた。
 そろそろ、また月は生まれ変わろうと細く細くその姿を細らせ始めていた。

 ぞくりと、背中に冷水を浴びせられたような気がした。
 また、新月がやってくる。



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アダムの息子たち (虜) 16 

アダムの息子たち(R-18)

 その夜、暑さのための息苦しさのせいか、小枝子はとろとろと浅い眠りを繰り返してははっと覚醒するという、寝苦しい空気に悩まされ続けていた。

 ふと、窓の外の夜空を見上げ、その夜は月が見えないことに気付いた。

 はっと身体が硬直するその刹那、玄関の扉の鍵の外される音が、残酷なほど鮮明に響き、彼女は青ざめて扉を凝視する。

 そうだ、何故、彼は小枝子の部屋の鍵を持っているのか・・・?
 すうっと扉は開く。

 そして、前回と同じように聖凛の黒い姿が音もなく中へと滑り込んでくる。
 そうか、あの夜・・・。

 小枝子は反芻する。あの飲み会のあと、バッグに入れておいたスペアキーがなくなっていたことに気付き、愕然としたのだ。しかし、警察に届けようかと迷っている間に、いつの間にかそれは戻っていた。

 彼女をタクシーに乗せてここまで運んだ夜、彼は小枝子のバッグからスペアの鍵を抜き取り、合鍵を作って、先月、ここを訪れた夜に戻していったのだ・・・。

 真夏にもう差し掛かる時期だった。

 それなのに聖凛の服装は黒尽くめで、黒い上着を脱ぎ捨てたその身体から黒いオーラがたちのぼっているようにすら見えた。

 悲鳴をあげようと思っても、声は出なかった。

「・・・どうして・・・」

 ベッドの上の小枝子にゆっくりと覆いかぶさる聖凛に、彼女は細い声で哀願する。

「どうして、私を・・・?お願い、もう、許して・・・」
「何を?」

 聖凛は、その手を彼女の頬にそっと沿わせた。ふうっと冷気がその手から押し寄せる。

「許して・・・」

 小枝子の声は震えた。

「何を?」

 聖凛は繰り返す。突き刺すような冷たい瞳で。

「これは契約だ。」
「・・・でも、私は・・・知らない。曾祖母が貴方に何をしたのか、・・・どんな契約を、貴方と交わしたのかも・・・。」

 泣きそうになりながらも、小枝子は、これだけはどうしても伝えておかなければ、と勇気を振り絞る。

「違うよ。」

 聖凛は、目を細める。

「契約を交わしたのは、君自身だ。」
「・・・え?」

 驚いて目を見開いた小枝子の、何か言おうと開きかけた口をゆっくりふさぎながら、聖凛は頬に置いていた手をするすると下へ滑らせる。そして、滑らかに彼女のパジャマのボタンを外し、そのまま中へ侵入していく。

 素肌に乾いた大きな男の手を感じ、小枝子の身体はびくりと反応する。

「ん・・・っ、んんんっ」

 柔らかく、そして激しく、小枝子の舌を聖凛の大きな舌が包みこみ、そしてきつく吸い上げ、舌先をくすぐるように弄ぶ。敏感な舌先は撫でられて全身に痺れが走る。小枝子の口中に踊る舌は、くまなく敏感な部分を捕えていく。

 交じり合った二人分の唾液が、次第に小枝子の喉の奥に流れ込んでいき、それにむせて、彼女は苦しげに呻いた。

 唇を離した聖凛は、咳き込む小枝子を黙って見下ろし、顔を背けようとする彼女の顎を指で押さえ込んだ。

「ちゃんと飲み込むんだよ。・・・出来るだろう?出来るようになるまで、終わらないよ。」

 小枝子の瞳に恐怖の色が浮かんだ。

「や・・・っ、・・・いやあぁっ」

 反射的に逃れようともがく小枝子の両腕を片手で押さえ込み、もう片方の手は、その白く細い首を締め上げた。

「くうっ・・・」
「逆らうことなんて許さないよ。」

 感情のカケラもないような冷たい声だった。

「良いかい?可愛い小枝子、じっくり教えてあげるよ。契約とはそんな甘いものじゃない。君の身体にはすでに契約の印が刻まれている。この身体も、いずれは君の心も俺のものになる。時間をかけて躾けてあげるよ、この身体が俺の言葉に素直に反応するようになるまでね。」
 
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アダムの息子たち (虜) 17 

アダムの息子たち(R-18)

 長い夜だった。

 うっすらと覆い隠されていた『絶望』という文字が、眼前にくっきりと姿を現したような気がした。逃れようのない現実として。

 明かされていく新たな事実はどれも残酷で、耳をふさぎたくなるほど悲惨だった。
 契約とは何なのか。

 その刻まれた印とは・・・?
 もう、小枝子はそれを聞く気は起こらなかった。

 その夜、聖凛は、小枝子の身体中すべてにキスマークを、その白い肌に落としていった。首筋から胸元へ、そして、背後からその背中にも。首筋も背中も敏感な小枝子は、聖凛の唇が触れる度に切ない悲鳴が漏れる。吸われる刺激に何度でも背がのけぞり、身体中が震えた。

 腕から腹部へ、そして太ももへと彼の唇は身体中を這い回る。ふくらはぎまで下りた頃には、もう、小枝子は身体中が火照り、震え、何も分からなくなっている。

 聖凛は抱えあげていた小枝子の両足をそのまま開いて両脇のシーツの上に押し付け、とろとろと愛蜜が流れ落ちている甘い部分をゆっくりと味わう。

「あっ・・・あ、あ、あぁあっ・・・ふ・・・っ、くうぅっ」

 舌先の微妙な動きが小枝子の身体に何度も電流を走らせる。ピンク色に尖ったそこは、吸い付くと悲鳴をあげるほどの強い刺激に全身が痙攣する。そこをゆっくり舌先でくりくりと弄び、流れ落ちる蜜を吸う。

「あっ・・・ああ、あぁっ、あ、あ、あぁぁっ」

 聖凛の舌の動きに合わせて、小枝子はただ鳴き続ける。身体中すべてが同時に反応するみたいに、マークを刻まれたその紋様が疼いて熱くなる。もう、小枝子の中も蜜の出口も溶けてどろどろになっている気がした。

 身体の反応の支配権は聖凛の手の中だった。彼の意のまま、小枝子は何度も絶頂を迎え、ただ彼の手の中の楽器として旋律を奏でるだけだった。

 許しを請う言葉も、もはや形を成さないただの音声でしかない。

 意識はすでに何度も飛んでいた。それでも、聖凛は責めを緩めない。小枝子はもはや悲鳴すらあげられず、痙攣を繰り返す身体は次第にすべての感覚が麻痺していった。

 気が済むまで小枝子の身体を愛撫してその身体に自らの足跡を刻印し、失神するように眠りに落ちた彼女の身体を抱きしめて、聖凛は大きく息をついた。

 小枝子の、乱れた長い髪を手ですいて、額にかかる前髪をかき上げる。
 そのとき、腕の中の小枝子を見つめる聖凛の瞳には、冷酷な影は微塵も残ってはいなかった。
 



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アダムの息子たち (虜) 18 

アダムの息子たち(R-18)

 翌日、講義が始まる時間になっても小枝子は目を覚まさなかった。

 青い顔をして眠り続ける小枝子を、聖凛は黙って見下ろしていた。一月前と同様、明け方にはそこを去るつもりだった彼が、どうしてか立ち去りそびれていたのだ。

 窓から少し間を置いて、壁際に寄せてあるベッドの脇に立ち、聖凛は、何も言わずに彼女の顔を見ていた。手には、今しがた勝手に冷蔵庫を開けて出してきた水のボトルがあった。

 時計の針は止まらずにどんどん時間を進めていく。隣の奈々子が大慌てでバタバタと出かけていく音が響く。彼女も寝坊をしたらしい。その音に軽く身じろぎをし、小枝子がうっすらと目を開ける。

 聖凛は、焦点の合わない彼女のぼんやりした瞳を覗き込んだ。
 次第に意識がはっきりしてきた小枝子は、聖凛の姿を認めて、その瞳にははっきりと‘怯え’が浮かんだ。

「・・・あ・・・」

 何かを言いかけた彼女だったが、声がかすれ、そして、身体を起こすことが出来ないほど、身体に蓄積された疲労は激しかった。

 聖凛の、感情の分からないただ静かな瞳に怯えて、小枝子は僅かに首を振る。

 逆らったりしないから・・・。
 もう、今日は許して・・・。

 必死でそう訴えるその目には、涙がにじんでいる。

 聖凛は、無言で彼女の身体を抱き起こす。そして、ボトルの蓋を開け、小枝子の口にボトルの水を含ませる。
 一瞬、驚いた小枝子は、それでも大人しくされるがままに従った。半分ほどの水を飲み、小枝子は一息ついた。
 思考がまだうまく働いていない。

 小枝子は、身体にしみわたる水の余韻にぼんやりしたままだった。

 水で濡れた小枝子の唇。そして、裸のままの、彼女に刻まれた痛々しいほどの全身のキスマーク。聖凛は、彼を見上げる虚ろな表情の小枝子に、そっと口付ける。

 ぴくりと彼女の身体が震え、その見開かれた瞳には恐怖が宿った。
 今、何をされても、小枝子には逆らう気力も、まして受け留められる体力も残っていなかった。
 一旦唇を離して、聖凛は、ボトルの水を口に含み、それを口移しで彼女に与えていく。
 小枝子はもう逆らわかった。

 彼の口から水を受け取り、ゆっくりと喉に流し込んでいく。半分残ったボトルの水がすっかりなくなるまで、聖凛はそれを繰り返した。

 もう、部屋を出ようと、小枝子の身体を再びベッドに横たえて、聖凛は考える。
 そして、ぼんやりと窓辺に視線を移している彼女を振り返り、そのままそっと扉を出て行った。




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アダムの息子たち (虜) 19 

アダムの息子たち(R-18)

 聖凛の気配が部屋の中から消えたことに気付く頃、小枝子はようやく頭がはっきりしてきた。
 朝の光の中で見る聖凛は、大学構内で見かける彼と変わりがないように感じた。

 聖凛は、一見すると、顔立ちの綺麗なだけの普通の学生に見える。あの、ぞっとする冷たい目は、今ではこの部屋の中で、小枝子を抱いている間だけのものになっていた。教授の受けも良くて、頭の回転が早い、彼は多くの女性の注目を集めるタイプの学生だった。

 彼の本性を知っているのは小枝子だけで、これだけは、決して誰とも分かちあえない恐怖だ。
 今でも、まだ何がなんだかよく分からない。
 彼の憎しみ、そして・・・。

 戸惑いのようなものを感じたのは気のせいだったのか?
 自分を陵辱することで、彼は満足するのだろうか?
 ・・・違う、と思った。いや、思いたいだけなのか・・・。

 巫女だった小枝子の曾祖母。

 確かにそんな話しをずっと昔聞いていた。しかし、もう後継者がいなくて、昔彼女がよく遊びに訪れた神社も、他の家で管理されているとそんな話しだった。

 小枝子の祖母も、そして娘である母親も、巫女の力は受け継いでいなかった。
 そして、当然、小枝子にもそんなものはない。

 だけど、何か・・・その家系そのもの・・・そんなところに鍵があるのかもしれない。
 小枝子は、入学式以来帰ってない実家へ戻って、曾祖母のことを調べてみようと思った。  

 次の新月までに。
 そうすれば、何か方法が見つかるかもしれない。彼の手から逃れるための・・・。




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アダムの息子たち (帰郷) 20 

アダムの息子たち(R-18)

 翌週の週末、小枝子は家に戻る準備をしていた。家にはまだ連絡を入れてはいなかったが、学食で時刻表を片手に電車の時刻を調べ、乗り換えの時間差を計算していた。テーブルの上には、氷が溶けてすっかりぬるくなっている紅茶のカップがあった。

 そこへ奈々子が、週末、一緒に映画を観に行かないか?と小枝子に声をかける。

「どうして?・・・彼氏と一緒に行かないの?」

 販売機からコーラを買って持ってきた奈々子は、彼女の向かいに腰をおろし、憮然と言った。

「それが聞いてよ!あいつったら、せっかく苦労して手に入れた話題の新作映画なのに、当日、サークルの合宿が入ったとか言い出すのよ。当日券たがら、その日に行けなきゃ意味ないのに!」

 小枝子は微笑んだ。怒ってはいても、なんだか、とても楽しそうだったのだ。

「ごめんね。私、今日の午後の講義が終わったらそのまま家に帰ってくるから、日曜日じゃないと戻らないの。」
「え?なんでまた。何かあったの?」

 きょとん、とコーラを飲みながら、奈々子は言う。

「ううん・・・。ただ、入学以来帰ってなかったから、ちょっと顔出してみようかな、と思って。」

 少し慌てて小枝子は曖昧にごまかす。

「なんで~?どうせなら、夏休みに戻れば良いじゃん。」
「・・・それも、そうなんだけど・・・。」

 言いながら、ふと小枝子は真横から視線を感じ、ふとそちらに目をやった。

 そこには、聖凛が自動販売機の前にコーヒーカップを抱えてすっと立っていた。
 小枝子は、思わず声をあげそうになった。

 今の話を聞かれただろうか・・・。
 小枝子の視線の先を見て、奈々子が、あら、聖凛!と声をかける。

「ねえねえ、明日、あたしと一緒に映画観に行ってくれる気ない?」
「映画鑑賞後の食事代がワリカンならね。」

 聖凛は微笑みながら近づいてくる。

「何、その冷徹さ!たまにはごちそうしてくれてもバチは当たらないと思うわよ。」
「彼氏持ちに下手に親切にすると、誤解されるからね。」
「分かった!それで手を打つから、お願い!あたし、この映画絶対に観たかったの。でも、一人ではね~。」

 二人の楽しそうな会話を、小枝子は聞いていなかった。テーブルに出していた時刻表をそっとカバンにしまい、うつむいたまま、紅茶のカップに手を伸ばし、痛いような聖凛の視線を感じていた。その手が震えていたことに、彼は気付いただろうか。

「小枝子、じゃあ、気をつけて行って来てね。」

 余計なことをにこにこと言って、奈々子はテーブルを離れていく。彼女を心細い思いで見送った小枝子は、そのまますぐにでも席を立ちたかった。しかし、テーブル脇に立つ聖凛の気配に、身体が強張り、動かなかったのだ。

 小枝子が家に戻る目的を彼が知るはずはなかったのだが、彼から逃げたいという思いを見透かされたような気がして、小枝子は怯えていた。

 聖凛は、カップの飲み物をぐいっと飲み干して、小枝子の後ろをすうっと通り抜ける。そして、彼女の背後を抜けるとき、小枝子の耳元に低い声が聞こえた。

「俺を怒らせない方が良いよ。」

 瞬間、ざあっと全身の血が引き、小枝子は目の前が真っ暗になった気がした。そして、やっと振り向いたときには、彼の姿は学食から消えていた。




(※最初から読む:アダムの息子たち 1


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アダムの息子たち (帰郷) 21 

アダムの息子たち(R-18)

 ずいぶん、迷ったが、小枝子はそのまま家に帰ることにした。

 このまま黙っていては何も解決しない。何より、自分が何も知らず、何も分からず、そして納得できないことばかりだという現状を少しでも打破したかった。

 そこに潜んでいる真実が、或いはもっと悲惨な事実を告げるものだったとしても、今より現状が悪くなることはないと言い聞かせながら。

 小枝子の曾祖母は、小枝子が生まれて間もなく亡くなっているはずだった。だから、彼女に曾祖母の記憶はない。しかし、彼女が生まれたとき、曾祖母がわざわざお祝いに訪れたことだけは聞かされていた。

 巫女の血は、直系の女児だけに受け継がれるという。

 曾祖母の娘は祖母だけで、そして祖母の娘は二人いたが、伯母の子どもは男の子だけだった。だから、自分が女の子だったことを彼女はひどく喜んでくれたという。

 現代に於いて、巫女とか、神とか、そういうものはもう遠い世界の昔話だ。だから、母も巫女の直系だとか、そういうことにはほとんど関心がなく、小枝子に至っては、神社とは初詣に行く場所くらいの認識しかない。

 最後の巫女だった曾祖母。
 彼女と、聖凛の関わりとはいったいどんなものなのか・・・?

 だいたい、彼は小枝子と同じ大学1年である。つまり、曾祖母が生きている間に聖凛が彼女に会うことなど、限りなく不可能に近いのではないのだろうか・・・。
 



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アダムの息子たち (帰郷) 22 

アダムの息子たち(R-18)

 途中の駅で電話を入れ、実家に戻った小枝子は、その夜の夕食の席で、おばあちゃんの実家の神社を訪ねてみたいと言い出した。

「おばあちゃんの実家?・・・どうして急に?」

 父も母も怪訝そうだった。もう社会人の姉も不思議そうに妹を見る。

「うん、ちょっと聞きたいことがあって・・・。」
「まあ、別にそれは構わないけど・・・。」

 母はご飯を口に運び、そしてふと言った。

「そういえば、ひいおばあちゃんは、あんたが生まれたとき、やっと後継者が出来たと喜んだそうだけど・・・、結局、あんたにもそういう徴候は表れずじまいだったわね。」
「えっ?」

 と小枝子は驚いた。

「それ、どういう意味?」
「あんたが生まれたとき、巫女の力を引き継ぐ者が生まれた、ってそのときひいおばあちゃんは言ったそうよ。まあ、でも、その後、間もなく亡くなるくらいお年だったから、それを望むあまり、夢でも見たんじゃないか、って今ではそういう話になっているそうだけど。」
「私に、何かそういう・・・徴が、あったの?」
「全然。」

 母は笑った。

「そういう力みたいなのは・・・なんていうのか、修行とか、訓練に寄って引き出されるものじゃないかとお母さんは思うわ。血とか、関係なく、素因を持った子が。血筋が関係あると思われているのは、そういう家に生まれた子は、そういう環境で育っているからでしょう?あんたがあの神社で生まれ育って、ひいおばあちゃんと一緒に暮らしてたら、そりゃ分からないけど、こんな遠く離れた地で、普通の生活してたら、いくら直系とはいえ、あまり関係ないんじゃないのかしら。」
「・・・そうか。」

 小枝子はなんだかほっとした。

「それが、訪ねたい理由?」
「・・・それだけじゃないんだけど。」

 小枝子のどこか元気のない様子に母は心配そうな視線を向ける。

「大学で何かあったの?」
「ううん。違うの。」

 小枝子は慌てて微笑んだ。

「ただ、そういう時代的なものをテーマにレポートを書かなきゃならなくて。ちょうど良いかな、って思っただだけ。」




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アダムの息子たち (帰郷) 23 

アダムの息子たち(R-18)

 久しぶりだし、と翌日、両親と小枝子は曾祖母の家へドライブがてら訪ねてみることになった。姉は、休日出勤とかで、朝早くから仕事に出かけて行った。今は仕事が忙しい時期らしい。

 曾祖母の家、今は後継者がいないため、他の神社と掛け持ちで別の人が管理している神社がその家の近所にあり、たまに、家族でそこを訪れると、小枝子はよく一人で神社の境内に入り込んでいたという。曾祖母の予言もあり、当時は、さすが巫女の子は神社が好きなんだ、などと言われていたそうだが、子どもの興味など、大抵は別のところにあるものだ。それに、小枝子自身、そんなことをまったく覚えてはいなかった。

 曾祖母の家は、今は彼女の長男夫婦から更にその息子夫婦が住んでいて、巫女であった曾祖母のことを詳しく覚えている者はもういなかった。そもそも巫女は女系なので、男子には情報は伝わらないのだ。

 巫女は、胎内に子どもを宿すことに寄ってその力を失う。だから、生涯、巫女だった曾祖母には直接の子どもはいない。彼女の姉妹が生んだ子たちが、その血を次に引き継いでいるのだ。

 母にとっては懐かしい伯父や伯母であったため、思い出話などに花が咲いていたが、小枝子が知りたかった曾祖母と聖凛に関する情報はほとんど得られなかった。

 ただ、巫女の生業の一つに、‘邪’の封印というものがあり、神社には封印の祠があったそうだ。それを封じたのが曾祖母だったのかは分からない。ただ、曾祖母は、決してそこに近づくなと言い残して亡くなったそうだ。

 父も母も、しまいには政治のことだとか、釣りの話しだとかに夢中になってしまい、小枝子は退屈になって一人外へ出た。

 そして、庭から林を通って伸びていく小道を見つけ、なんとはなしにそこを歩いてみた。周りに涼しげな林が広がり、進む毎に緑は濃くなっていく。気持ち良い風が吹きぬけ、小枝子はどんどん進んでいく。

 そして、歩いていく内に、彼女は奇妙な感覚が蘇ってくる。
 私は、この道を知っている。

 そう言葉にして思った途端、小枝子は視界がぐん、と開けた気がした。木々の緑は一層鮮やかになり、光が眩しいくらい目に迫ってきた。

 そうか、子どもの頃の感覚に戻っているんだわ・・・と小枝子は思う。

 そして、小さな小枝子に導かれ、彼女は進む先に神社の境内があることを知る。不意に開けた視界の先に、夢で見たそのままの光景が広がっていた。

 あの夢は・・・実際にあったことだったんだろうか・・・。
 玉砂利の敷かれた庭に入り込んで、石を積み上げ、無邪気に遊ぶ幼い小枝子の姿が見えるような気がする。
 そして、小枝子はゆっくりとそちらに目を向ける。

 小さな祠が、あった。
 そこの前に座って小枝子が遊ぶ様を見ていた人物。
 黒尽くめの、男。

 だけど、小枝子は特に怖いとは感じなかった。ただ、映画の画面を観るように、その光景が脳裏に鮮やかに広がる。

 彼は、いつもそこにいた。
 小枝子は、そこでいつでも彼に会っていたのだ。

 そういえば、彼は誰だったのだろう?神主さん?近所の人?

 もともと、小枝子は滅多にその家を訪れることはなかったので、近所の人の顔も知らないのだ。
 それとも、実は変質者とか、そういう何かの犯罪に絡むような人物だったのだろうか・・・?

 不意に、ぐらりと視界が揺れる。
 なんだろう?
 何か・・・、何かを忘れている・・・?

 その途端、かああっと身体が熱くなり、そして、額が割れるように痛んだ。小枝子は悲鳴をあげる。そして、その場に崩れ落ち、気を失った。



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アダムの息子たち (帰郷) 24 

アダムの息子たち(R-18)

 気が付くと、そこには‘男’の幻が浮かんでいた。
 真っ黒なフードから覗く暗い瞳。

「聖凛・・・?」

 そう呟いた自分の声に我に返り、はっとする。玉砂利の冷たさを頬に感じ、小枝子はゆっくりと身体を起こす。
 意識を失っていたのは、ほんの一瞬だったようだ。
 小枝子は、ゆっくり立ち上がって、服を払い、周りを見渡した。
 何も、変わったことはなかった。



 結局、ほとんど何も、得られることはなかった。むしろ、混乱が深くなっただけだったかもしれない。

 分かったのは、あの夢が、恐らく現実にあったことをモチーフに綴られていたという事実くらいなものだ。そして、それにまつわる何かを思い出すことを、彼女が恐れているということだ。

 つまり・・・、と小枝子は思う。
 もしかして、鍵は、私の記憶の中にあるのかもしれない・・・。

 小枝子は日曜日の朝、変に落ち着かない重い心を抱えて、アパートへ戻るしかなかった。



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アダムの息子たち (抵抗) 25 

アダムの息子たち(R-18)

 キャンパスで見かける聖凛に、変わった様子はなかった。いつもの通り、誰とでも如才なく付き合い、微笑を交わして、そこにいた。

 それでも、小枝子はぞっとする視線をどこからともなく常に感じ続けていた。怖くて振り向くことは出来ないのだが、聖凛がそこにいることはなんとなく分かるのだ。

 別に・・・やましいことなどない、と小枝子は必死に考える。

 ただ、自分の血のルーツを知りたかっただけ。
 夢の光景を確かめただけ。

 しかし、そう思うそばから、別の声が聞こえる。
 じゃあ、なんでそんなに心が落ち着かないの?本当は何を期待してたの・・・?


 
 新月の夜が近づいていた。
 大学に戻って間もなくは忘れていたのに、その日が近づく度に、あの声がリアルに蘇ってくる。

‘俺を怒らせない方が良いよ’




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アダムの息子たち (抵抗) 26 

アダムの息子たち(R-18)

 いつもなら絶対に断っていたのに、その夜、小枝子は一人で部屋にいる恐怖に耐えられなくて、奈々子の誘いにのって、再び飲み会に参加する。

 聖凛も現れたらどうしよう?と彼女はメンバーが次々姿を見せる度に怯えていたが、最後まで彼の姿はなかった。小枝子はほっとしてちびりちびりと軽い酎ハイのグラスを空ける。女性陣は夕食もしっかり兼ねているので、沢山並ぶカロリーの高そうな品々にも、小枝子は少しずつ箸をつけ、交わされる周りの会話をただ聞いていた。

「そういえば、小枝子、聖凛と付き合ってるの?」

 突然、そう奈々子に切り出され、小枝子は絶句して彼女を見つめる。

「・・・ち・・・違うよ?どうして?」
「え?・・・なんとなく。聖凛がよく小枝子を見てるし、この間、あたし映画に一緒に行ったじゃない?」

 ビールのジョッキを片手に、奈々子はちょっと考え込む。

「学食で、彼に声を掛けてたとき、二人とも、なんとなく様子がおかしかったから、あとで考えたのよ。あれ~、あのとき、私、かなりマズイことしたんじゃないかな~って。聖凛って今まで誰かと噂になったことないから、あたしの中では、特定の相手をつくらない男かな、っていう理解だったのよ。ごめんね、悪気はほんっとになかったのよ。」

 小枝子は思わぬ誤解に唖然とした。しかし、そこで不用意に否定したりしたら、もし、聖凛の耳に入ったとき、どう思われるか・・・。そう考えると返答のしようがない。小枝子はそれには何も返事を返さず、曖昧に微笑んでみせた。

「ごめんね。」

 奈々子はもう一度そう言って微笑んだ。



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アダムの息子たち (おしおき) 27 

アダムの息子たち(R-18)

 大分遅くまで飲んで、その夜は真夜中過ぎに解散となった。奈々子とタクシーを乗り合わせ、小枝子はほろ酔い気分で彼女の部屋の前で奈々子と別れる。そのもう一つ奥の角部屋が小枝子の部屋だった。

 鍵を差し込んでドアを開け、小枝子は大きく息をつく。
 聖凛が現れる時間は過ぎていた。

 このまま今夜が無事に過ぎてくれれば・・・。

 中に入って、しっかりと施錠をする。彼も鍵を持っているわけだから、それは無駄な行為には違いなかったが、気休めにしか過ぎなくても、そうせずにいられなかった。

 なんとなくほっとして玄関をあがり、何か飲もうと冷蔵庫の扉を開ける。

 そのときだった!
 背後に人の気配を感じて小枝子は飛び上がりそうなほど驚いた。

 そして、声をあげる間もなく、大きな手に口をふさがれ、そのまま背中から抱きすくめられたのだ。

 恐怖にすくむ小枝子の耳元でささやかれる冷たい怒りを帯びた聖凛の声。

「自分の立場を、分かってないようだね、小枝子。」

 その声には、抑えきれない苛立ちが宿っていて、小枝子はその冷気にぞうっと全身が冷えていくのが分かった。

「もう一度、躾け直さないとダメかな?」

 口をふさがれている小枝子には弁解の余地もない。

「ねえ?可愛い小枝子、俺もちょっと反省してるよ。君に自由を与えすぎたってことを。ここで一度、きついおしおきをしておこうね。」

 歌うように彼は言い、恐怖にすっかり顔色をなくした小枝子をそのままベッドまで引きずるように連れて行く。

 どさりとベッドの上にその身体を投げ出され、小枝子がはっと振り返ったときには、すでに聖凛の下に組み敷かれていた。

「・・・や・・・イヤ・・・!」
「何?」

 憎悪に燃える冷たい視線とは裏腹に、彼の声は甘く響く。

「何か言うことがあるのかな?」
「・・・許して・・・」

 くすり、と彼は目を細める。

「違うだろ?可愛い、小枝子。」
「・・・ご・・・ごめんなさい・・・っ」

 震える声で、小枝子は必死に許しを請う。

「ごめんなさい、・・・ごめんなさい。」

 聖凛は、それにはもう答えず、片手でぐい、と小枝子の喉元を押さえ、もう片方の手はするりとスカートの中に侵入し、そして、下着を引き剥がすように外していく。

「・・・っ!・・・イヤ・・・っ」

 ぞっと怯えて、小枝子は声をあげてもがく。

 小枝子の抵抗を軽く制し、聖凛の手はスカートを腹部までたくし上げ、彼の足が、小枝子の両足の間に割って入る。そして、彼の手は滑るように後ろの穴へ到達した。びくり、と小枝子の身体は嫌悪に震える。

「やあぁっ・・・やめて・・・、やめて!」

 あまりのことに、小枝子は悲鳴をあげて身体をよじる。しかし、聖凛は一瞬のためらいもなく、小枝子のきゅっと引き絞ったその穴へと、彼の指を押し入れた。
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アダムの息子たち (おしおき) 28 

アダムの息子たち(R-18)

「きゃああぁぁあっ」

 その痛みとおぞましさに、全身がぞうっと総毛立った。呼吸が乱れ、頭が真っ白になる。

「あ・・・あ・・・っ!・・・い・・・イヤ・・・、お願い・・・やめて!・・・やめて!」

 小枝子の目からは涙があふれる。その感覚はただただおぞましかった。鳥肌が立つ、という感覚を初めて体験した。耐えられなかった。

「他に、言うことは?」

 優しい声で、聖凛は小枝子の顔を覗き込む。

 彼がどんな言葉を引き出したいのか、小枝子には分からなかった。意識はずっとそこに集中し過ぎていて、それから逃れることしか考えられない。指先を入れられているだけで、吐きそうに苦しい。

「いや・・・あ、あぁ・・・っ」
「他に、言うことは?」

 一段、冷たい声で、彼は繰り返す。ぐい、と指先が少し奥へと進む。ぞくっと背筋に悪寒が走り、その痛みに小枝子はもう声も出ない。硬直した身体からじっとりと汗がにじみ、息をうまく吸えなくて、呼吸困難に喘いでいた。

「二度と、俺から逃げようなんて考えないと誓えるかな?」

 聖凛の声が遠くで響くようににじんで聞こえる。

「・・・ち・・・誓います。」

 涙声で喘ぐように、小枝子はただ繰り返す。

「もう・・・逃げようなんて・・・しません。」
「本気で言ってるのかなあ?」

 不満そうな声が上から降ってくる。ずい、という感じに指が動き、びくん、と小枝子の身体には更に力が入る。もう、限界だった。苦しくて痛くて、そして怖くてただ涙があふれてくる。

「許して・・・、許して。お願い・・・します。もう、逆らったりしないから・・・。」

 小枝子は小さく首を振り続けて哀願する。
 他にどうして良いのか、彼女には何の考えも浮かばない。

 しばらくその様子を黙って見下ろしていた聖凛は、不意に、すっと指を抜く。おぞましい感覚が消え去り、小枝子はがくがくと全身から緊張が抜けた。がちがちに固まっていた身体にようやく血が廻り始めるのが分かる。

 それでも、その違和感はずっとそこに残り続け、震えが止まらなかった。

「シャワーを浴びておいで、小枝子。」

 そう言われて気が付くと、いつの間にか、聖凛はベッドの脇に立って、彼女を見下ろしていた。

 がくがくと震えたままの身体をゆっくり起こして、放心したように小枝子は彼を見上げた。涙が流れ続けたまま、彼女は自分の感情すらもう把握できない。



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アダムの息子たち (おしおき) 29 

アダムの息子たち(R-18)

 差し出された彼の手をとって、小枝子はふらふらと立ち上がる。そして、バスルームに向かって一歩踏み出した彼女に、聖凛は言う。

「ここで、服を脱いで。」

 小枝子は一瞬、何を言われているのか分からない、という表情で振り返って彼の目を見つめた。そして、その言葉をゆっくり反芻し、意味を理解する。

 茫然としながら、小枝子は更に顔色をなくしていく。
 どうぞ、という目で、聖凛は小枝子をじっと見つめたままだ。

 今、彼女に、拒否権は、ない。

 小枝子は音が聞こえるのではないかと思うくらい震えながら、自分の服に手をかける。サマーシャツを脱ぎ、キャミソールを脱ぎ、震える手でブラジャーを外す。最後にスカートに手をかけたとき、彼女は僅かにためらった。
下着は、さっき既に剥ぎ取られていたのだ。他に、彼女を守るものはない。

 聖凛の不躾な視線を浴びながら、するするとスカートを下ろし、小枝子は涙が床にぽたぽたと滴り落ち、恐怖と羞恥に、膝ががくがくと震えているのが分かった。

 月明かりのない闇の夜、それでも、小枝子の白い肌はぼうっと光って浮かんでいるように見える。

「良い子だ、可愛い小枝子。」

‘可愛い小枝子’

 その言葉をすっと昔、聞いた気がする、と聖燐に唇をふさがれながら、彼女は思う。溺れそうに深いキスを与えながら、聖凛は、小枝子の髪を優しく撫でる。

 そしてもう片方の手は、小枝子の胸をゆっくりともみしだき、ときに乳首をつまむように弄ぶ。彼女の口の端から唾液が流れ落ちていき、身体はぴくぴくと反応し出していた。

 充分に彼女の理性を奪ったあと、彼は微笑んで、シャワーを浴びてくるように、と再度言い渡す。
 小枝子は、ただ頷いて彼の言葉に従った。



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アダムの息子たち (おしおき) 30 

アダムの息子たち(R-18)

 もう、すでに明け方近かったのかもしれない。

 その夜は、ベッドでゆっくりと唇を合わせたあと、彼はすぐに挿入してきた。そして、深く身体を繋ぎ合わせたまま、小枝子の敏感な部分をゆっくり愛撫していく。首筋を、乳首を、熱い舌を這わせ、丁寧にキスを落としていく。

 ゆっくりと柔らかく聖凛の手が白い肌を撫でる。
 気持ちが良い・・・と初めて小枝子は思った。

 恐怖に震えていた小枝子の身体は、その優しい愛撫に次第にとろとろと溶けていった。そして、ひどい苦痛を与えられたあとの甘い蜜のようなセックスは、彼女の心に錯覚を起こさせる。

 愛されている、という残酷な錯覚を。

 それが‘錯覚’なのか、そうではないのか、しかし本当は聖凛にもきっと分かってはいない。
 すべては、本人の思い込み。呪いと同じだ。

 人の思いは‘祈り’であれ、‘呪い’であれ、必ずそれを発した当人に還ってくる。
 与え続けたもの。
 求め続けたもの。

 ‘想い’は時空を超え、時代を超え、相手に辿り着く。そして、等倍のものがまた還ってくるのだ。同じ時代では還り着かなくても、その魂に、いつか。



「あっ・・・あ、あ・・・。」

 聖凛のものが、小枝子の中でどくんどくんとはねたとき、空はもう白み始めていた。夏の朝日が東の空を駆け上がってくる瞬間だ。

 ゆっくりと身体を離し、どろりと彼の精液が小枝子の太ももを濡らすのを確かめて、聖凛は、さすがに少し眠気が襲ってくるのを感じた。

 小枝子は、もうすっかり寝息になっている。

 聖凛も、そのまま彼女の隣にごろりと横になった。仮眠をとってから帰ろうと彼は思った。そして、彼もまた、そう思った次の瞬間には眠りの淵に引きずりこまれていた。



 シャワーを借りて帰り支度を整え、聖凛が小枝子の部屋を出たのは、大分明るくなってからだった。奈々子は、隣の部屋から人の出てくる音を聞き、小枝子がもう大学に向かったのかと、慌てて起き上がる。

 そして、時計を見て、6時前だと知る。まだ早いのに・・・?と、ふと窓の外を見下ろし、歩き去る聖凛の後ろ姿を見つけ、ぼんやりと寝ぼけた頭で、考える。

 今、小枝子の部屋から出てきたのは聖凛だったのか?と。
 そうか、やっぱりあの二人は付き合ってたのか。

 妙に納得して、彼女は再度ベッドに潜り込み、二度寝の威力に負け、講義に遅刻する羽目に陥るのだ。



(※最初から読む:アダムの息子たち 1


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