Stories of fate

倒錯の世界です。R指定作品(カテゴリ下半分)はお勧めするものではありません。警告は必ずご確認ください。共通テーマは‘闇’の昇華です。

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【復讐は罪がゆえに粛々と受け入れ給え】 

未分類

【作品説明】

『紺碧の蒼』:これは、sound hrizon の「宵闇の唄」「磔刑の聖女」他をモチーフに描いた世界でした。
あの独特の世界を描くには力量が足りなかったですが、焦がれた世界観を救いのある方向へと持っていこうとして…でも、描き切れなかったモノです。

『真紅の闇』:こちらは、何かを模索途中で、しかも白銀きな子さん世界『ツクモ白蓮』の‘奏一郎’さんに心酔して、彼の空気をほんの少し取り込んで描いた世界です。はい、この件に関しましては、ご本人さまにご報告済みです。が、いや、たいして似てません。彼の透明さはマネ出来ません!
ちょっと‘社会の闇’を描いたつもりが、別の闇(病み)になっていたかも…

『背徳の奏 ~漆黒と深紅のモザイク~』:こちらは、作品説明そのまま。これは、fateのリンク『Drained』早花鬼かつまさまの作品、「The Dark Ride」を拝読させていただき、そのあまりの切なさに悶え苦しみ(?)その世界をもう少し救いのあるモノに出来ないか?とかつまさまには事後報告で(^^;作品の設定をちょっといただき、fate world に仕立て直し、妄想世界を綴らせていただいた代物です。
って、やつです。
前の2作品のと同じ動機やんけ? って?
はははは(^^;
その通りだったりして…(--;

『黄泉の肖像』:こ…これは、いや、実はこれも…
こちらは、リンク先のTome館長の『地下牢』という作品、そのイメージ世界から妄想とともに生まれたstoryです。
通りすがりにコメントしたfateに、設定を快くお貸し(しかも、やはり事後報告で…(^^;)くださった館長に改めて心よりお礼申し上げます。

『花籠』シリーズ総まとめ編:花籠シリーズと、スムリティ、そして外伝集を順番に並べ直した一気読み編です。スムリティのR指定を抜いて加筆したので、初めての方はこちらがお勧めです!
作品説明に、文芸社さんからいただいた「講評」を掲載いたしました。

『花籠』シリーズ:はい、こちらは、珍しくほぼfateのオリジナルです!(威張ることか?(-"-*)
『花籠』という組織の物語。必殺仕事人に近い世界です(じゃあ、オリジナルじゃないやんけ!…あ、あれっ???)
これは、読者さまの声をふんだんに取り入れて生まれた世界で、web世界ならではの展開でした。
読んでくださったからの声がなければ、‘4’まで、更にその後の外伝までは辿りつけませんでした。
本当に心より感謝申し上げます。
コメント欄で関わってくださったすべての皆様、そして、他サイトでいろいろご意見をくださった読者さま、本当に皆様のお陰でここにこうして掲載させていただいております。
が、これは、実は一番疲れました(^^;
なかなかハードな世界でした~~~

:『花籠』外伝 隆一と椿の出会いの辺り、っていうか、そのものっす。
段々、『花籠』誕生秘話って雰囲気になってきた…かな?(^^;

『ラートリ~夜の女神~』R-18:こちらは、雪原と女神と疾風という風を描きたくて始まった世界です。

『光と闇の巣窟』R-18:こちらは、何故生まれたか疑問の世界でした。これこそ、fateが描いたんではなくて、勝手に生まれた物語です。‘復讐’をテーマに置いたことしか覚えておりません。そして、‘復讐’という悲劇を描きたかった。それこそ、徹底的な悲劇にするつもりが…

『光と闇の巣窟』Another story:ということで、再度‘復讐’に取り組み、ここで決着を迎えた物語です。何を訴えたかったのか。それは、茉莉ちゃんがすべて教えてくれます。

『蒼い月』:純真な読者さま…というか、初めての方にはもしかして、これが一番お勧めかも知れません。が、これはここで声を大にして申し上げます。「これはfateにとってものすごく異色です」fate worldがこういう世界だと勘違いして他作品に入ると「ぎゃああああっ」ということが起こりますので、ご注意を。しかも、これって「誰も幸せになれない、救いのない世界」と酷評された経歴を持つ作です(--;(ま、一理あるけどさ。)

『永遠の刹那』:ラブコメです。けっこう軽いノリの軽いタッチです。fateは一番くらいに好きです。描くのが楽だったので(^^)←いや、描くのが楽しかった、という意味です。けっこうノンストップで描き終わりました。
作品説明:両親を亡くし、追われるように故郷を出てきた田舎娘。そこで彼女を拾ってくれたのはどこか怪しい鍼灸師。「婚姻届」を人質(?)に取られ、波乱万丈の新生活が幕を開ける…

『Sunset syndrome』:これもラブコメです。『永遠の刹那』が女性の語りで、女性が振りまわされたバージョンだったので、今度はヤローを振りまわしてみようかね、という安易な発想のもと、生まれた物語です。
作品説明:自称親父の婚約者だと名乗る女性がある日突然やってきた・・・!!!

『マーメイド・シンドローム』R-18:これは、R指定ではありますが、ほんの一部だけです。そして、未だに疑問なのはこの主人公の態度の悪さというか、すれてるというのか、いい加減というのか。
ちょっとイジメたくなりますな。
「人魚姫」をモチーフに描きました。
そして、この後、ポールさん(クリスタルの断章)が、「面白かったです! なるほどこういう展開でこういう結末でしたか。 すばらしい! これをネタにファルスを思いつきましたが、UPしようかどうしようか……。」おっしゃって描かれたものがこちら→『人魚姫異聞』
更に、あびさん(水の森文庫)が「このお話は、お友だちのfateさんの人魚姫をモチーフに描かれた作品「マーメイド・シンドローム」を読んだ後に着想したものです。私の頭の中にはいきなり、本当にいきなりな感じで、全く違うタイプの人魚が現れました。妖しく美しく、したたかな印象の人魚。私は彼女を「珊瑚」と名づけました。珊瑚は唐突にでてきたくせに、すごい勢いで私の頭の中で暴れ出しました。」と『猩々岬』という素敵な世界をそれぞれ描いてくださいました。

『陰影 1』R-18:これは、☆☆☆以下を読まなければ、フツーのラブストーリィ…に限りなく近づいた作品と思われます。ある4月の朝にすれ違った二人が恋模様を描いていく過程…というのか。
男嫌いというより、男性恐怖症に近い女の子が、人気者の喫茶店のマスターに惹かれていくっていう、まぁ、すんげ~ありがちな何でもないstoryっす。はい。1なので、2もあります。執筆中ですが…、いつかup出来るのか不明です(--;

『陰影 2』:↑いつup出来るか・・・と言ってたものって、大抵出来ないんだけど、これは描き始めて放置していたので、さすがに完成させようと(^^;
しかし、なんで、こうなるのかな~、とfate自身も呆れつつ。
描くつもりなくって、ちょっと言及しただけの輩って高頻度で拾い上げられて設定から描かなきゃならん羽目に陥るのはなんでだ???
『虚空の果ての青』でも、樹のお兄さんなんて描く予定、当初はゼロだったのに・・・
(↑ああ、相変わらず説明になっとらんっ!!)

『虚空の果ての青 第一部』:これは、一応、R指定を外そうとした加筆訂正バージョンです。が、ヤることはヤってるので、官能描写を抜いただけです(・・;
しかも、この世界自体がものすごく過去作なので、表現や描写のアラが目立ちまくっていてあまりにヒドかったので、そのへんをちょっくら手を入れたモノです。(と言っても、そんなに変わりませんが~(ーー;)
R指定は抜きましたが、テーマの重さは変わらないし、倒錯も変わらないし、犯罪も流血も出てきます。
なので、R‐15くらいかも知れません。
読んでいただける場合はいろいろご注意を(^^;
(恋愛、家族愛、それから、人が人と関わり合って成長していくこととか。そういうこともテーマには込めてあります。)
(まぁ、一応。)

『虚空の果ての青 第二部』:ここから、事件が連発し、優ちゃんは「これでもか!」ってほど酷い目に遭います。これは、fate自身が辛いターンでした。
改稿前、描きたくないな、これ、と思った箇所があり、でも描かないと物語が成り立たない、って部分があって、直視するのが辛くて、事後報告つまり回想シーンのようにボカした場面がありました。それを今回(吐き気を催しながら(^^;いや、大げさじゃなくって、本気で・・・)リアルタイム進行で描きました。
うう、辛かった。っていうか反吐がで出そうでした。

『虚空の果ての青 第三部』:これで、この物語は終結いたします。

『虚空の果ての青』R-18
※削除いたしました。

いただいたコメントは別に保存させていただいた上、ネタバレ的に掲載させていただいております。
(↑嫌がらせ? いえいえいえいえっ、違いますよぉ! コメント嬉しかったので、残したかっただけっす~)

※:当初の作品説明です⇒「これは、…じつは、この物語のためにこのブログを立ち上げました。というほど、けっこう大事な世界です。が、つまりはほぼ最初に近い作品なので、ものすごくアラが目立ちます。加筆訂正も少しはしてますが、いずれ、大幅訂正が必要かも。そして、実は、これ、まだ完結していない唯一の世界です。もう、何度もここでやめようとか思いつつ進めては止まり…状態です。終わらせるのが寂しいくらい、長い付き合いです。
ああ。それで、内容はですね。
施設で育った‘優’が青年実業家の、樹と出会い、彼の気まぐれで付き合い始めて…
う~ん、プロットって描いたことないから説明出来ん。
覚悟がある方は読んでいただけると嬉しいです。
(何の覚悟? そりゃあもういろいろと…(^^;)」

『アダムの息子たち』R-18:これは、fateの第一作品だとfateが云ってるので、そうなんであろう。
他サイトに作品掲載するに当たって、まずは読者を釣るために。という不純な目的で『官能』小説を描くことにしました。それで、無駄に官能シーンが多いっす。今読むとfateが赤面します(--;
これは、日本の鬼伝説と‘永遠’と‘孤独’そして、すれ違う想いの切なさを描いた…つもりです。はい。
ただ、凌辱シーンありますので、そういう世界に嫌悪を抱かれる方は途中退場可です!
(というより、無理! と思われる方は入場制限させていただきます。っていうか、頼まれたって入らね~よってことっすよね(^^;)

『Horizon』R-18:これは…好き嫌い分かれると思います。調教的なことに嫌悪を抱かれる方は入場なさらないでください。かつて読者さまが‘シンデレラ・ストーリィ’のような表現をされてくださったことがありましたが、まぁ、そうなのかなぁ…って感じです。ちょっと裏の世界が垣間見えるので、story自体は軽いんですが、支配・被支配という関係を容認される方のみどうぞ。
なんて、脅しているけど、そんなに重くはないし、コメディに近いんだけどな。

『スムリティ』R-18:これ、実は近々R指定を抜いて(そういう部分を軽く流して)再upします。何しろ、『花籠』にとてもとても絡んでしまっているのに、R指定に引っ掛かる読者さまに読んでいただけないことになっているので。↓↓↓
ということで、『花籠』シリーズ総まとめ編にR指定外して掲載しました。「スムリティ2」もよろしくです。はい、同時に掲載しております~(^^)
『スムリティ』という組織の中に生きている女の子の物語。ってそれじゃ、分からんよな。ええと、施設の中で生きていた子が外の世界に出て、いろいろ…まぁ、ある訳っすよ。
いや、これでも分からんっつーの。

『サードゥ ~修行者・遊行者~』R-18:これは、いや、これも、「社会の闇」を描きたかった。が、R指定の必要性あったのか?
はい、ないっす。これも、‘釣り’目的で他サイトに掲載していましたので。
なので、もしかしたらその内、R指定を除くような加筆修正するかも知れないし…しないかも知れない。(どっちだ!!! (-"-*)

『アハンカーラ ~エゴ・自我意識~(R-18)』R-18:R指定作品です。ちょっとこれはダレてます。初期作品から大幅に修正したので、どこへ行き着くかさっぱり分かっておりません。組織とか社会とか、人間の想い、思い、そしてここに載せたサブ・テーマは・・・
「優しい嘘と残酷な真実」どちらを選びますか?
・・・の予定です(・・;(未だ完成しておりません…)

『月の軌跡』R-18:これは、警告いたします。かなりキツイ凌辱シーンから始まります。無理な方は入場されないでください。これも、‘復讐’から始まり、その闇が溶けて後悔する…パターンです。
何故か無駄に長いハナシになりました。最終的にはかなり救いを得ますが、冒頭は嫌悪を抱かれる方がいらっしゃると思われます…

『ローズガーデン』R-18:これも、要注意作品です。ほぼ前述の通りです。

『カーマ(愛)~相生の理~』R-18:削除しました。いずれ、大幅な加筆修正をして再upの可能性はありますが、そこへ至る道のりは遠い…

『Sacrifice』R-18:これも、お勧めはしません。凌辱シーン、大丈夫な方のみどうぞ。ただ、これは「育てられなかった子ども」を描いたものです。愛を知らない。人との関わり方を知らない。そこに救いを模索しました。

『業火 ~hellfire~』R-18:一言、姉弟の相姦モノです。最近、読み直して表現力のアラが気になり、加筆しようか削除しようか…って感じっす。まぁ、妄想として楽しめる方のみどうぞ(^^;
「飢えと渇き、
奪うことと支配すること
それらは実は真逆の何かを誘発したりもしますよね
だいたいその途中でやめちゃう
ここまでふたりがいっしょなら、幸せも不幸もない新しい世界もあるでしょう
落ち着きどころという世間に屈した卑しさや弱さによる視点ではなく、
かれらにはかれらの居場所があってこその「世界」かと 」
などという素晴らしきコメントを勝手に「そうそう!」と解説に取り込んでしまいましたが。やはり、上の注意事項は熟慮くださいませ。

『業火 ~hellfire~(リライト編)』R-18:執筆中です。なかなか進みませんが、なんとか死に物狂いで終わらせます。はい。fateの渾身の一作です。これが最後の伝え遺したかったことかな。特に、前作にはなかった後半部分。今回は苦しみぬいて描き終えます!

『下化衆生』R-18:これは、あり得ない高尚な題を冠してしまいましたが、それを目指しただけで、単なる‘闇’を描いただけになりました。ただ、かなり以前に他サイトに掲載した世界を、磯崎愛さん(唐草銀河)世界のミズキさんに心酔して、彼を取り込みたくて加筆したモノです。もちろん、まったく至りませんでしたが(^^;
先へ進まれることをドキドキしておられた読者さまに、「たいしたことないっすよ、大分加筆してますから~」などというコメ返を見て、「これで‘たいしたことない’んだったら、かつてはどんだけ…」などと妄想を膨らませるのは止めましょう(--; 健全な精神を損なう恐れがあります。って、テメェの作品は不法薬物かっ!!!

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業火 (あとがき) 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 テーマは、ネグレクト→少年犯罪…という図式の少年犯罪の部分を趣向を変えて、悲劇を映してみました。
 無駄に前半部分が長いのは、まぁ、fateの闇(病み)故と理解してください。

 いろんな描写をかなりはしょったというか、敢えて語らなかったのですが、葵、基それから由美の辿った苦悩は察して余りあるものがあるんじゃないかと。
 ここでは、「親」にはあまり触れませんでした。
 親には親の言い分があるんであろうけど、厳然とした罪の事実が双子を不幸のどん底に陥れた訳です。
 
 特に双子が辿らざるを得なかった苦悩は、同情して泣いてしまいうそうです(?)

 さて、ここに新たな物語、「あおい」が生まれそうな気がいたしますが。
 これは、別の誰かに譲って、fateは引退するとしようかね。

 なんちゃって。

 また、亡霊が復活していたら、「やっぱりな」となま暖かい目で見守ってください~(^^;


業火 あおいそら 51 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

『兄さん。
 兄さんが家を出て行ってから、家の中は大変な騒ぎでした。兄さんのご両親が突然帰国して訪ねて来られたり、兄さんの父方の祖父母という方々までいらして責められたりと、もう目も当てられない騒ぎになりました。
 そんな中、姉は次第に顔色が優れなくなり、だけど私たちはそれはそういういろいろなことが引き起こした精神的なものだと思っていました。姉のことは心配していたけど、それどころではない事態に引きずられて、私も少しおかしくなりそうな時間でした。
 警察に捜索願を出して少し落ち着いた頃、今度は姉が突然消えてしまいました。
 荷物を全てまとめていなくなった兄さんとは違って、姉は何も持たず、本当にある日忽然と消えてしまったんです。
 母は半狂乱になり、父も愕然とし、そして私もどうして良いのか分からない時間が延々と流れました。
 今思えば、姉は、あなたのご両親と私たちの親とがお互いを罵りあう姿に絶望していたのかも知れません。
 兄さんも姉さんも消えてしまって半年以上が過ぎ、もうすぐ夏が終わりを迎えようというとき。たまたま私が対応した一本の電話がありました。
 姉からでした。聞いたこともない地方の田舎の病院からでした。
 入院費を払えないから、通帳と印鑑を届けて欲しいという内容でした。姉は本当に何もかもを置いて行ったので、彼女名義の通帳が確かに家にあって、そこには月々のお小遣いやお年玉やいろいろなお祝い金なんかが貯めてあって、確かにある程度のまとまったお金は入っていたんです。
 姉は言いました。
 私が出なかったら名乗らなかったと、だから、誰にも言わないで欲しい、こっそりと通帳だけを届けて欲しいと。その場で問いただしたいことは沢山あったけど、私はとにかく姉に会えば説得も出来るだろうとその病院へ向かいました。そして、知ったんです。
 姉は、兄さん、あなたの子どもを身篭っていたんです。
 それを知ったとき、姉は決意したそうです。
 一人で生んで育てようと。
 父や母に知られたら堕胎を勧められるだろう。或いは、もし仮に許してくれたとしても、両親につらい思いをさせてしまう。この罪は一人で背負おうと。
 兄さん、姉はあなたに対する贖罪と精一杯の誠意、そしてありったけの愛情の証として、あなたの子どもを生むことを選んだんです。 
 見知らぬ土地で、臨月近くまで一人で働いていた姉は、充分な栄養の確保も難しかった。倒れて入院したとき、病院では子どもは諦めなさいと言ったそうです。もう、どちらかしか救えないのだと。
 そして、姉は子どもの命を選んだんです。
 母に相談しよう、話さない訳にはいかないと一人で考えている間に、本当に再会して間もなくのことです―姉はあっという間にひとりぽっちで逝ってしまいました。私が出産直前の姉に会ってお金を渡し、来週また来るから、と帰った翌日のことだったそうです。まだ予定日前だったのに、突然の破水。姉はそれでも、自分の力で赤ん坊を産んだんです。
 姉の葬儀は済みました。父も母も、子どもの父親が兄さんだとは知りません。いえ、気づいているのかも知れませんが、私は教えていません。
 僅かに早産で生まれたあおいは、あと数日で退院出来ます。今週末には両親と引き取りに行く予定になっています。その前に、兄さん、抱いてあげてください。きっと、もう二度と父娘として会うことはないと思いますから。
 兄さんを探すのは簡単でした。姉が言ってたんです。「基はホストになってるのかも」って。探偵社にそう指定して探してもらったらあっという間に見つけてくれました。
 私は兄さんを生涯許しません。
 父も、母も、同じです。
 それでも、姉はあなたを最後まで愛していた。あなたのために命を犠牲にしても構わないほど。…それだけは、ほんの少し羨ましいと思います。』



 そしてその週末、葵の両親が赤ん坊を引き取りに病院を訪れたとき、もう子どもはいなかった。子どもの父親が連れて行ったと、病院側は答えた。

 取り乱す両親を悲しそうに見つめながらも、由美は姉の遺言をまっとう出来たことに安堵し、同時に二人の行く末を案じる。子育ての経験どころか、親にまっとうな愛情を注いでもらえなかった男が一人で赤ん坊を育てられるとは思えなかった。

 それでも。
 姉は信じてみたのだろう。自らの愛の奇跡を。

 見上げた空は高く澄んで、その向こうに葵が微笑んでいるような気がした。









業火 あおいそら 50 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 翌日、由美に渡されたメモ紙の住所を訪ねて基が訪れたそこは、大きな病院で。彼を待っていたのは、生まれたばかりの赤ん坊だった。新生児室のガラスの向こうで淡い桜色の産着を着てすやすや眠っている赤ん坊。沢山の新生児の中に、間違いなく葵の面影を宿したその子を目にして、基は全身に震えが走った。

「…葵?」

 その赤ん坊は、本当にぞっとするほど葵に似ていた。

「ご家族の方ですか?」
「え」

 白衣の看護師が彼の背後で微笑んで立っていた。

「どの赤ちゃんですか? 抱っこしてみます?」

 基は再び、赤ん坊に視線を移す。そして、その子を見つめたまま看護師に聞いた。

「あの子の…母親は」
「ああ」と看護師は声を落とした。「亡くなられました」
「どうして―」
「出産までお一人で相当無理をされたようで、最後の力を振り絞ってお子さんをご出産されたんです」
「どうして…」

 看護師は基の顔を覗き込んだ。

「お父さま、ですか?」

 基はただ黙って彼女を見返した。

「目元が似てますね。それと、その髪の色が。お母さんの髪はもっと柔らかい色でしたから」
「あの子の…名前は?」
「あおいちゃんです」
「葵?」

 驚いて基は看護師の顔を凝視した。

「ええ」彼女は僅かに微笑んだ。「お母さまと同じ名前だそうですね。ただ、お子さんの名前はひらがなで‘あおい’です」

 目の前で涙を零す男に、看護師は柔らかい笑みを浮かべた。

「抱っこしてみますか?」

 白いエプロンをつけさせられて、そっと手渡されたその赤ん坊を腕に抱いた瞬間、基は嗚咽を抑えられなかった。

「葵…、葵…、葵。どうして…どうして」

 ぽたぽたと零れる涙が赤ん坊の産着にいくつも染みをつくった。僅かに目を開けたその子は、まだよく見えない目で基を見上げ、澄んだ眼差しで彼を見つめた。

 新生児室を出ると、先ほどの看護師が、白い封筒を差し出した。

「基さん、ですね」

 真っ赤に泣き腫らした目で基は頷いた。差出人は由美だった。



業火 あおいそら 49 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 そして、時計の針は進んだ―。
 まだ夏の気配が残る秋口。




 高級ホストクラブに、一人の女性客が現れた。クリーム色のごく普通のスーツ姿で、店にはおよそ似つかわしくない清楚な空気を抱く若い女性だった。

「どなたのご紹介で?」

 入り口でそう聞かれた彼女は、常連客の名を静かに答えた。

「うかがっております、どうぞ。…ご指名はございますか?」
「はい」彼女は、店の入り口に提示されてある一人のホストを指さした。
「この人を―」

 席に案内され、やがて現れた男は、彼女の顔を見て僅かに表情を強張らせた。

「…由美、ちゃん?」
「基兄さん」

 由美はゆっくりと彼を見上げた。

「どうして―ここが」自嘲的な笑みを浮かべて彼女の隣に腰を下ろした男に、まるで抑揚のない声で由美は告げた。
「姉さんは、死んだわ」

 え、と基はゆっくりと目を見開いた。

「葵が…?」
「死んだわ」
「いつ」
「一月前よ」
「ど…どうして」

 動揺のあまり基はテーブルの上に並べてあった花瓶を倒し、あたふたとそれを片付ける彼を見つめて、由美はそのまま静かに席を立とうとする。

「ま―待って、由美ちゃん」

 慌てて基は彼女の腕を掴んで妹を引き止める。

「それだけ、言いに来たの」
「待って」

 まるで呼吸を整えるように大きく息を吸って、基の瞳は一瞬空(くう)を泳いだ。

「さよなら、兄さん」由美の声は冷たかった。そこに密やかな憎悪を感じる。
「待てよ。いったいどういうことだよ、なんで葵が」

 最後に葵の姿を見たとき、彼女は間違いなく元気そうだった。最後まで葵は基を真っ直ぐに見つめ、彼を心配していた。そして、あの瞳に浮かんでいた熱い炎に彼は怯えたのだ。
 彼には、応え方が分からなかった。
 愛の意味を、愛することの意味を、彼は知らなかった。
 それまで彼を必死に諭していた葵が、不意に彼を弟としてだけではなく、もっと違った深い色の愛で包み込もうとしてくれた。
 本当は、それこそが彼が望んでいたことだとどこかで分かっていたのに、逃げ出すことしか出来なかったのだ。

「兄さんのせいよ」
「俺の?」

 由美は追いすがる基の目を一瞥し、肩に置かれた手を振り払った。

「もう二度と会うことはないと思う」
「由美ちゃん!」

 清算をして入り口に向かう彼女の後を追って、基は店の外へ出る。

「待って、由美ちゃん。教えてくれ、いったいどういうことなんだ!」

 店の外に出てコートを羽織った由美は、僅かに躊躇った後、ポケットから一通の手紙を取り出して基を振り返った。

「姉さんからよ」

 呆然とそれを受け取った基は慌てて封を切る。葵の匂いが微かに漂っている。震える手で中の紙を取り出して貪るように文字を追う。

「兄さん」その様子を黙って見ていた由美は一枚のメモ紙を彼に差し出した。
「ここへ行って。兄さんを待ってるから」

 基は涙を零していた。

「待ってるから」

 由美はそれだけを言ってその紙を基の手に握らせ、そのまま夜の町へ消えていった。

「どうして…っ」

 由美が去ったことにはもう構わずに、そして、周囲から浴びせられる冷たい視線もまるでお構いなしに、葵の手紙を抱きしめて、基はその場に崩れるように座り込む。

「どうして、葵…」


 
『基。ごめんね。
 ずっと大好きだよ。
 今度生まれ変わったら、別の形で会おうね。
 ううん、でも、また双子でも良いかなぁ』



 力のない字で、まるで死に逝く者の息遣いのような弱々しい筆跡だった。文字通り、最後の力を振り絞って、彼女はその言葉を遺したのだろう。


業火 あおいそら 48 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 突然行方をくらませた基に、葵の家族も更に基の父も大騒ぎだった。

「いったい、どういうつもりなんだ」父は青ざめ、「どうして? 何が気に入らなかったの?」と母は泣きそうだ。

 何かを知っていそうなのが葵だったため、母も父も何度もいろいろなことを聞いた。行き先に心当たりはないのか、何故引き止めなかったのか、と。しかし、葵にも答えられる何もなく、基の居場所を知りたいのは彼女の方だった。

 時差も気にせず国際電話で基の父親から苛立った電話があったとき、葵は思わず叫びそうになった。

「今更そんな風に心配するくらいなら、どうして、もっと早く基の心を救ってくれなかったの?」と。
「基は、女のお前とは違う。この家の跡取りなんだ」と父親は言った。

 跡取り? 子どもは家を継がせる道具? 家の名前の存続のためだけに男の子である基を引き取り、息子の心の傷を一切顧みることなく演じる良い子に満足していたのか?

 抑えきれない暗い怒りが湧き起こってきた。

「基を返してよ!」

 受話器を叩き付け、葵は叫んだ。

「基を返して!」
「葵?」

 娘の様子に母は驚き、慌てて抱きしめた。真夜中の静寂の中だった。

「葵、落ち着いて」
「基、基、基…っ、どこに行ったのよぉぉぉっ!」

 うわあああ、とまるで子どものように声をあげて泣き出した葵に、母は言葉を失う。
 違う。これは、母である自分の罪だ。

「葵…ごめんね」母の声は震えた。「ごめん、葵。一番悪いのはお母さんだったね。基のことをあんたに任せっきりにして、ちゃんと向き合ってあげなかった。ごめんね、ごめんね、葵」

 だけど葵にとって、周囲の喧騒は単なる騒音にすぎなかった。彼女は彼女自身の嵐に立ち向かうだけで精一杯だったのだ。



 時間の経過と共に、葵には基の声が聞こえるような気がした。冷たい態度の裏側で、ガチガチの鎧の内側で、幼い子どもの基が膝を抱えてうずくまっている姿が見える。

 基は、私に助けを求めていたのだ。

 基は、―止められない狂気を、止められない欲望を、私に受け留めて消し去って欲しかった。知りたい、と言いながら、私は基の何も理解してあげられなかった。彼が本当に苦しんでいることを気づかない振りをして、常識という刃物を振りかざし、彼の心を傷つけた。

 基は、…ただ、愛して欲しかっただけなのに。ただ、愛したかっただけなのに。



業火 あおいそら 47 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 そして、葵が卒業式で家を空けた日。
 基は父と母にすら何も言わずに、忽然と消えてしまった。部屋の中には「お世話になりました」と白い紙に一言書かれていただけ。

 帰宅し、空っぽの部屋を見ても、葵にはその意味が分からなかった。まるでこの数ヶ月が夢のように感じた。基なんて弟はもともといなかったんじゃないか? 二人で過ごした時間は幻で、お互いの中に確かに繋がりを見たと思ったのも錯覚で。

 涙も出ない。ただ、胸が重苦しくて息がうまく出来ない。世界が歪んで、ぐるぐるまわる。吐き気がする―。

 葵は慌ててトイレに駆け込む。そして、胃からこみ上げてきたドロドロとしたものを吐き出した。げえげえと吐き続けて、次第に嗚咽が混じってくるのを感じていた。

 私は―、そうか。弟に恋していたんだ。恐ろしいほど澄んだあの魂に寄り添って、温めてあげたかった。ううん、違う。温めて欲しかったのだ。一緒に笑い合って、一緒に歩いて行きたかった。

 どうして、そう伝えなかったんだろう? 彼の心がすっかり閉ざされてしまう前に。
 他の誰も要らない。基が欲しい。基が大事で大好きなんだと。



業火 kazoku 46 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

「基」思わず、基の部屋の扉の前で声を掛けてしまう。闇の一番深い時間帯。起きている筈などなかったのに、彼の部屋の扉は音もなくすうっと開いた。

「何か用?」

 寝ぼけた顔ではなかった。瞳にはしっかりとした光を湛え、きっちりと部屋着を着込んでいた。それでも部屋の中は寒々としていて、起きて勉強をしていたとかそういう様子ではなかった。

「あの…ごめんなさい。起きてると思わなくって」

 用がないなら、と扉を閉められるかと思って俯いていたが、基の気配はまったく動かなかった。

「葵、もう、俺に構うな。そう言っただろ?」

 声が恐ろしく低く静かだった。いや、弱々しいといった方が近い。驚いて顔をあげて、その瞳と出会い、葵は心臓を鷲摑みされた気がした。

 基の瞳の奥に、深い傷が見えた。必死に覆い隠そうとして、誰にも気付かれまいと幾重にも鎧を纏った生のままの傷口。そこから絶え間なく流れ落ちているのは血と膿と―涙、だと葵は思った。

「お願い、基。私は―」
「姉さん」と基は冷たい笑みを浮かべた。「センター試験が終わったら、俺はここを出るよ。別に大学へ行きたい訳じゃない。もう、俺はここに用はない」
「待って、どうして?」
「本気で、俺に孕ませられたいのか? 俺はご免だよ」
「…ど、どういう意味?」
「俺の子どもなんてゾッとする」

 言葉と裏腹に、基の目が泣きそうに見えた。

「もし、赤ん坊が出来ていたら、俺が間違いなく殺してやるよ」
「基、そんな話をしてるんじゃないよ」
「姉さん、言っただろ? もう、俺はここに用はない。君にも、だ」
「…用はない?」
「ないね」

 葵には何を言って良いのか、どうして良いのか、さっぱり分からなかった。その傷に触れたりしたら、きっと基は悲鳴を上げるに違いない。その逆鱗に触れる勇気はなかった。これ以上、彼の心が離れてしまうのが怖かった。

「じゃ…」

 葵が言葉を探して彷徨っている僅かの間、基はじっと彼女を見つめていた。そして、葵が何も言わないのを確かめると、そのまま扉を閉めた。

「基!」

 葵はゾッとした。今、何かを外してしまった。取り返しがつかないくらい、大事な瞬間を―。
「基、…基、基…っ!」
 何度、彼の名を呼んでも、もう扉が開くことはなかった。

 センター試験が終わり、葵の入試も終了した頃、基が家を出る支度をしている気配を葵は感じていた。通りすがりにちらりと覗くと、部屋の中は綺麗に片付けられ、それまで無造作に置かれてあった彼の私物はほとんど見当たらなかった。

 基が、いなくなってしまう。言いようのない寂しさを感じて葵は身体の芯が冷えたような寒さに耐えていた。

 行かないで、と瞳で訴える葵に彼は視線を合わせようとはしない。冷然とした目で見返されるよりマシだろうか。基が今何を考えて、どこを彷徨っているのか、何を決めて何を捨てて、何を選んだのか、葵には分からなかった。

「どこへ行くの?」

 固く閉ざされた扉の前で、葵は中へそっと声を掛ける。

「ねぇ、基。お願い、教えて。これからどうするつもりなの?」

 返事はない。今まで何度も、何度も、こうやって扉の向こうの基に必死に話しかけてきた。しかし、大抵中はしんと静かで、ほとんど物音は聞こえない。そして返事が返ってくることもなかった。



業火 kazoku 45 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 葵は、ひとつ決心をしていた。

 基の両親と話してみたい。そしてどうしようという明確なものはなかった。ただ、話しをしてみたいと思った。基を、知りたかった。

「お母さん、基の…ううん、私の本当のお父さんの連絡先、分かる?」

 父がまだ帰宅する前、由美にも基にも気付かれないように、葵はキッチンに立つ母にそっと聞いてみる。え、と振り返った母の表情にどこか傷ついたような複雑な色が浮かんだが、葵はひるまなかった。

「分かるけど…どうして?」
「ちょっと話してみたいだけ」
「どうして今?」
「基のことが知りたい」

 誤魔化すことなく、真っ直ぐに母を見上げた娘の目を見つめて、母はゆっくりと息を吐いた。

「…分かった。電話番号を教えるから」
「ありがとう」

 海外にいるとい基の両親。時差のことなどを細かく聞き、葵は手渡されたメモを持って部屋へ戻った。



 その夜、時差を計算し、葵は父親が起きている筈の時間帯、未明の闇の中で明かりもつけずに受話器を取った。国際電話なので、少し気は引けるが、母に了解は取ってある。

 電話番号をまわして、無音の数秒の後、普通に呼び出し音が鳴った。義母が出たらどうしようと一瞬考えたが、いや、義母にこそ、本当は話しを聞きたいのだ、と覚悟を決めた。

 受話器を取ったのは、男性だった。他に男性はいない。父で間違いないだろう。

「もしもし。あの―日本の…」

 葵が名乗っても彼は全然気付いてくれなかった。基の双子の姉です、あなたの娘です、と告げると、「ああ」と父は間延びした声で答えた。「葵…か。どうしたんだ?」
 もう寝る寸前だったようで、父の声は疲れ切っていた。

「お父さん、は、…私のことを覚えてましたか?」

 なんだか、声が震えそうだった。何を聞きたかった訳ではない。ただ、どうしても話しをしなければ、と思ったのだ。

「覚えてるよ、当たり前じゃないか」

 想像していたより、父の声は優しかった。

「あの、…お父さん―」
「…金か?」

 思ってもみなかった言葉を聞いて、葵は一瞬、それを現金のお金だとは認識出来なかった。

「いくら必要なんだ?」
「え、違う。違います」
「お母さんに言えなくて、俺を頼ってきたんだろ?」

 それは、ため息を吐くような声色で、葵はショックを受ける。

「必要な金額を言え。こっそり振り込んでやる。学費が足りないのか?」
「そうじゃなくて…」
「まさか、手術代か?」
「お父さん!」

 思わず叫んでしまい、葵は慌てて周囲を見回した。しんとした部屋の隅に、何かの気配を感じた気がする。

「金じゃないなら、何か他に用件があるのか?」

 冷たくはないのに、葵はぞくりと背筋が粟立った。話しが通じない。いや、日本語を話しているのに、言葉が通じない気がした。

「お父さん、基のこと、心配じゃないの?」

 離れて暮らす息子の安否を彼は一度も尋ねなかった。

「基? 心配する必要なんてないだろ? 何かあるのか?」心底、驚いたように、彼は言った。

 実の母親に預けているんだ、これ以上の安心はないじゃないか、と父は呆れた口調だ。いや、確かにそうだよ? 母が基に再会したときの様子を見れば、母が基をどれだけ愛しているか分かる。この父も、一時期は母と夫婦だった人だ。母のことは分かっているから安心しているというのは理解出来る。

 だけど―

「…お父さん、お義母さんに代わってちょうだい」
「あいつに? なんの用があるんだ?」
「ただ、話してみたいだけ。お願いします」
「今夜は遅かったんだ、もう寝てるよ」
「じゃあ…」
「葵。悪いけど、俺も疲れているんだ。他に用がないなら切るよ。金は本当に必要ないのか?」
「要らない」
「そうか。じゃ、元気でな」

 ぷつりと通話は切れた。その途端、無音の中に一人置き去られ、葵は茫然としてしまった。
 私のことは良い。生まれて間もない赤ん坊のとき別れたきりの娘だ。娘への愛情が欠落していたって、責められやしないだろう。私だって、本当の父のことなんて今まで考えたことがなかった。今の父を本当の父と思って暮らしてきたのだ。不満も寂しさもない。

 だけど。もしも逆だったら? 私が何かの事情で父の家族のもとに預けられたりしたら。もしも海外に行ってしまって電話もしょっちゅう掛けられない状況だったとしても、私も母もお互いに手紙やメールで必ず連絡を取り合っているだろう。母も、そして義父も、一度くらいは声を聞きたいと国際電話もしてきたに違いない。

 葵は思わず冷気を感じて身震いした。

 お金? どうして真っ先にお金のことを考えるんだろう?
 基、あなたの心は今どこにいるの?


業火 kazoku 44 

業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

 翌日、父と由美が帰宅して賑やかになり、一見、日常が戻ったように見えた。

 基は家族の前ではそれまでと様子が変わらなかったし、皆の前ではごく普通に葵とも話しをしていた。しかし、基の心がすっかりこの家から―いや、葵から離れてしまったことを、彼女だけが感じていた。その豹変振りは恐ろしいほど徹底していた。

 それまで、葵は常に基の視線を感じていた。それは射るような鋭さを伴うこともあり、或いは、まるで息苦しくなるような熱いものであったりもした。それをまったく感じなくなって、葵は初めて知る。

 愛と憎は、同じものだ。
 表現の仕方が違うだけで、その重さも、狂気も、情熱も、違うことなく正比例するものなのだ、と。



「お姉ちゃん、最近、具合い悪いんじゃない?」

 敏感に姉の様子に気付いた由美が、ある朝、朝食を残して片付け始めた葵に言った。お正月気分はとっくに抜け、センター試験が近づいた頃だった。とっくに食べ終わって部屋へ戻りかけていた基は、僅かにその言葉に反応したように見えた。

「え、そんなことはないけど。あんまり食欲ないだけだよ」

 葵がそう答えるのを背中に聞きながら、基は振り返りもせずに二階へ向かった。もともと家族の前では他人行儀でクールな基だったので、由美は兄の様子にはほとんど注意を払わなかった。

「風邪でもひいたかしら?」

 テーブルを片付けながら、母は娘の顔を覗き込む。

「熱はないと思うよ」

 葵は僅かに笑みを見せる。本当は、基の冷たい背中に傷ついていても。以前は、二人きりになると、基はほんの僅かでも話をしてくれた。聞けば答えてくれる程度には。しかし、今はまったく二人きりになることがない。きっぱりと避けられていることが分かる。話しかけると露骨に迷惑そうな表情を浮かべ、しっかりと向き合ってはくれない。それでも一番キツイのは、彼がまったく無視をしたりはせず、相応の受け答えを淡々とこなしてくれることだった。

 それは、彼の心が、葵にはまったくないことを表している。つまり、他人として接していることだった。

「受験が近いのに、大丈夫なの?」
「平気」

 何が、平気なんだろう、と彼女自身が自らを嘲る。

「ちょっと部屋で休んでいれば治るから」

 本当に顔色が悪いと母も由美も感じた。

「何かあったの?」

 母の眼差しは鋭い。
 基と、何かあったの? とその瞳が言ってるのが分かった。

「何もないよ。緊張してるだけだって」

 それが何かは分からなくても、母は危惧した。しかし、それでなくても葵がいっぱいいっぱいの顔をして、必死に笑顔を見せるなら、信じてやるしかないと母は考えた。そっとしておくしかないこともあるのだ。親は何もかもに手助けをしてやることは出来ない。


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